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9月3日 18時0分
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増税敢行論者のダメな思考 - 村上尚己「エコノミックレポート」

先週31日に「消費増税を巡る集中討議」が終了した。日経新聞等によれば、識者60名中44名が、予定通り来年4月に8%へ消費税率を引き上げるべき、と意見を述べた。霞が関がお膳立てしたこの会議には、マクロ経済の専門家ではない企業経営者などが多数含まれたこともあり、賛成派が多くなったということだろう。

一方、この会議には安倍首相や菅官房長官は出席しておらず、首相官邸がこれらの意見の偏りに左右されるわけではない。幅広く意見を徴収し、政治判断を行うため多くの判断材料を集めたということだ。しかも、予定通りの増税を主張する識者も相当の方が、経済への悪影響が大きいため「景気対策」や「減税」を提示している。

また、安倍首相の経済ブレーンの多くは、タイミング先送りや増税幅の見直しを提示している。そして、世論調査では、昨年末に国民がノーをつきつけた民主党政権が決めたという経緯もあり、予定通りの8%への消費増税には20%程度しか賛成していない。

先週の集中討議で多数派だからと言って、予定通りの8%への引き上げの可能性が高まったとは言えないだろう。むしろ、それまで予定通り増税すべきと主張していた経済学者が、増税幅縮小を提案するなど、「3%引き上げ」の悪影響の大きさがはっきりした、という面もあった。

ほぼ五分五分だが、安倍首相の政治判断として、消費税率を予定通り引き上げない可能性が、僅かに高いと筆者は考えている。これについて最終決断は10月以降と報じられているが、政治判断次第の不透明な投資材料によって、現段階で、敢えてリスクをテイクする必要性は高くないだろう。

消費増税の是非を巡り、様々な意見がメディアで報じられているが、「増税敢行」を社説で訴えている日経新聞を筆者は毎日読んでいることもあり、「増税すべき」との意見を拝見することが多い。ただ、それらをいくら読んでも、予定通りに増税をする政策に、妥当性はないと筆者は考えている。以下では、「増税敢行論者」のダメな思考の問題点を説明する。

増税を「できるだけ早く」実現しなければならないと主張する論者は、「財政状況が危機に陥っている」「残された時間がない」などと述べている。ただ、どの程度残された時間がないのかが、実はちゃんとした説明はなく、ほとんど「おとぎ話」の類である。そして、このような、印象論(借金が膨大で大変ダー)を繰り広げる論者の特徴は、財政収支(歳出ー歳入)の問題を、税率や給付金額などの制度変更だけで解決できる、と思い込んでいることである。

もちろん、消費増税も税率を変更する制度変更で、財政収支を改善させる一手段である。ただ、言うまでもないが、財政赤字や公的債務は、マクロ経済全体(家計、企業、政府、海外、がプレーヤー)の変化の結果大きく動く。経済全体の成長率を決めるのは、家計、企業の民間部門であり、民間経済が正常化すればそれで税収は大きく増える。

現在の税体系によって、経済成長によってどの程度税収が増えるかを7月24日レポートでご説明した。政府部門の問題を考えるうえでは、このように経済全体がどう動くかをきちんと考えることが必要だが、「増税敢行論者」はこう考えない。財政収支や公的債務は「政府部門という閉じられた世界」でしか変動しないと前提を置き、税率などの操作で変動させるという、「足し算と引き算」の発想でしか財政収支を考えない、のである。

日本は20年もデフレという異常な経済状況に苦しんでいる。その原因は、民間部門における消費と設備投資という総需要が抑制されていることだ。そして、本来の実現できる経済成長(潜在成長率)を実現できないでいることを意味する。そうした民間部門の停滞を、打破する妥当な政策が必要で、だから金融政策という経済安定化政策を軸に置いた、アベノミクスは成功しつつある。

一方で、消費税率3%引き上げは、家計所得の減少を通じて個人消費を失速させるリスクが極めて高い。デフレから抜け出し正常化しようとしているのに、その動きを止めることになる。このように、経済全体の観点から眺めると、デフレが続きかつ目標とする2%インフレにほど遠い経済状況で、脱デフレの阻害になる大型増税はリスクが大きい賭けにしか見えない。

つまり、公的部門という閉じられた世界でしか物事を考えない「増税敢行論者」が抱く、偏狭な思考体系がダメなのである。経済全体を見据えない政策判断が、例えば1997年に実現してしまい、デフレを深刻化させ、その結果財政状況を更に悪化させる事態を招いてきたのである。

そうした古臭い、ダメな思考体系を打破して、まっとうな経済政策を続ける。それが実現すれば、アベノミクスは確実に成功するだろう。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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