今年の夏は猛暑や異常気象ばかりが目立った観がありますが、同時に安倍政権の問題点が2つ明確になったように思えます。それは、危機感の低下と、痛みを伴う政策への消極的な姿勢です。そして、これら2つの問題の根底にあるのは、表面的な演出はどうあれ、本質的には官邸のリーダーシップの低下であり、官僚任せの政策決定ではないでしょうか。

「汚染水漏れへの対応」3つの失敗

 安倍政権の危機感の低下を象徴するのが、福島原発の汚染水漏れへの対応です。

 安倍政権はこの問題について既に3つの失敗を積み重ねています。第一は、民主党政権の間に確立された原発事故対応スキーム、即ち、明らかに債務超過であった東電を潰さずに公的資金で延命させ、原発事故への対応は基本的に東電にすべてやらせるという体制を、政権発足後も何も変えなかったことです。

 しかし、東電を延命させて株式上場も維持したら、上場企業としてできるだけ早く黒字を回復しようとするのは当然ですから、汚染水などのクリティカルな問題への対応でもできるだけコストを削減しようとすることになります。即ち、汚染水漏れの本質的な原因は、原発事故後に経産省が作った東電救済/原発事故対応の間違ったスキームであり、早く東電を破綻処理して国が責任持って原発事故対応を全面的に行なうようにすべきだったのです。

 第二は、東電が汚染水漏れを公式に認めてから、東電内に対策本部が立ち上げるまでに1ヵ月以上もかかったということです。

 東電が汚染水漏れを公式に認めたのは7月22日です。それが参院選の翌日というのは意図的なものがあったかと勘ぐりたくなりますが、それ以上に問題は、東電内に対策本部が作られたのが8月26日と1ヵ月以上も経ってからであったことです。更に言えば、政府が汚染水の問題に本腰を入れ出したのもそのタイミングからです。

 東電に事故処理の責任を負わせるというスキームの下でも、監督官庁からプレッシャーをかけるなどできることはいくつもあったことを考えると、この遅れは、8月は安倍首相の長い夏休みと海外出張で官邸があまり機能しない中での怠慢としか言いようがありません。