6月24日、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が発表した、今年4月の全米主要10都市の一戸建て住宅の価格を示すケース・シラー係数は、前年対比マイナス16.3%と大幅に下落した。これによって、今年に入って4ヵ月連続の2桁マイナスとなり、4月の下げ幅は、同指数の算出が開始された1987年以来最大の下げ幅となった。それに伴い、住宅ローンの延滞率も一段と上昇する兆候を示しており、住宅ローン担保債券の市場も混迷の色を深めている。

 当該債券を保有する大手金融機関等では多額の損失の発生が続いており、その対応策として、多くの金融機関が資本増強策の実施を予定している。金融市場での信用収縮の拡大を懸念して、世界の主要株式市場は軒並み調整色を強めている。今後、原油や一部穀物の価格上昇が、実体経済にもマイナスの影響を及ぼすことは避けられず、世界経済は一層厳しい状況に追い込まれる可能性が高い。

世界的な住宅バブル崩壊の流れ

 2003年以降、潤沢な流動性を背景にして、世界的に“不動産バブル”あるいは“住宅バブル”が発生した。比較的“バブル”の発生が軽微だった日本やドイツを除くと、米国や英国、スペインなどでは大規模な不動産価格の上昇が起きた。しかし、“バブル”は永久に続くことはない。いつものように、いずれピークを迎えて、その後、価格下落の局面に入り、バランスシート調整の最終局面へと移行していく。今回も、今までの“バブル”とほとんど同じプロセスを歩んでいる。人間とは、学習効果の働かない生き物なのだ。

 ただ、今回、2つの要因が絡んでいることが、状況を一段と厄介なものにしている。1つは、証券化という金融技術によって、焦げ付いた住宅ローン債権が、様々な地域、分野に拡大していることだ。2007年に入ると、米国をはじめ主要国の住宅価格がピークアウトし、下落局面に入った。それに伴い、信用力の低いサブプライムローンの延滞率が上昇した。そうなると、サブプライムローンを基にして組成された住宅ローン担保債券(RMBS)の価格は大幅に低下した。当然、それらを保有していた金融機関などに損失が発生した。問題は、当該債券が、世界中に分散していて、どこの誰が、どれほどの債券を保有しているか判然としない状況である。その混乱ぶりが、事態の悪化を加速した。