見守りつつ、じっと待つ。
ぐっとこらえる。

 といっても、ただ放っておくのではなく、彼が疲れているようであれば「疲れてるみたいだけど、大丈夫か?」とさりげなく声をかけましたし、彼の母親が病気だと聞けば、本屋で病院に関する本を探して「○○病院にいい先生がいるみたいだから、一度行ってみたらどうだ」といった声かけはずっと続けていきました。

 そんな関係を続けているうちに、彼は徐々にやる気をとり戻し、仕事にも本気でとり組むようになっていきました。

 当時の私の行動がリーダーとしてベストだったかどうかはわかりませんが、「待つ」という選択肢も決して間違いではなかったと思っています。

 ちなみに、それから何十年も経った今でも「仕事がつらかったあのころ、母のことまで心配してくれて、本当に嬉しかったです」と、彼は昨日のことのように涙ぐんで話してくれます。