株式レポート
9月13日 18時0分
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シャドーバンキングの実態〜中国出張報告2〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

現在、香港において中国やアジアの経済・金融市場を分析しているエコノミストとディスカッションを行っている。香港においても、経済安定への政策転換で中国経済が回復に転じている点を、ポジティブに評価する見方が多数である。今週発表された8月分の経済指標改善、そしてサマー・ダボスの講演における李首相の経済安定化策への言及、などが前向きな見方を強めている(李首相の講演の中身は、11日レポートで解説した7月以降の言及と重なる部分が大きいが)。

9月11日のレポートに対して、「シャドーバンキング問題で、中国の危機はこれから来るのではないか?」と批判的なフィードバックを頂戴した。もちろん、この点を筆者は各ミーティングで話題に挙げているが、ほとんどの面談者は、これを悲観視せず、冷静に事態を捉えている。

日本のメディアでは、シャドーバンキングのリスクを強調して伝えられることが多い(だから、先ほどの様なフィードバックを頂くのだろう)。今回の面談者の一人に日本のメディアの記者もいたが、東京の編集側の方針で、「危機感を強調する記事」を書くことを求められている、という話を聞いた。記者の方も、中国のシャドーバンキングには、実際にはいろいろな側面があることを伝えたいのだが、リスクや危機感を煽る記事を求められる、と嘆いていたのが印象的だった(日本人の中国への複雑な感情が影響しているのだろう)。

例えば、中国のシャドーバンキンクの約半分を占めるのが、理財商品という投資信託のような金融商品である。これが、サブプライムローンのような極めて高いリスクを抱えており、金融システムを揺るがす可能性が指摘されている。もちろん、そうしたリスクが全くないわけではないが、米欧のサブプライム問題とは異なる点も多い。

銀行預金以外を経由した金融経路すべてが中国版シャドーバンキングとされているが、まずその規模が違う。シャドーバンキングの規模について、米欧の証券会社が発表している色々な試算がマーケットを賑わせている。ある当局者から、理財商品についてのアナウンスなどからそうした推計の詳細を聞く機会があったが、その規模は30兆元規模に及ぶという。

金額だけ聞くと一見大きいように聞こえる。ただ、銀行預金の規模と比較すればかなり小さいし、例えばGDP比率でみても金融仲介が発達している先進国よりも規模は小さい。中国都市部の所得が高まっているが、一方で預金金利などの規制が依然厳しいため、民間のニーズに応じて「理財商品」が必然的に登場した。そういう経緯もあるし、マクロ的には深刻なバブル崩壊を引き起こす規模に至っていない、ということである。

中国では、金融業全般に対する規制は依然として厳しい。これには色々な要因が影響しているが、厳しい規制が経済環境の変化にマッチしなくなっている。だからと言って当局が制御不能な規模で信用膨張が起きているかと言えば、それは違う。筆者はそうした問題意識を持っていたが、それが今回のいくつかのミーティングで確認することができた。

もちろん、中国経済が様々な問題に直面しており、中長期的に改善すべき問題が多いのは事実である。短期的には景気減速は止まり若干回復するとしても、かつてのような8%以上の経済成長は難しく、李首相を含め中国政府もそれを目指していない。

2000年代まで先進国へのキャッチアップの過程で技術革新を実現し、投資主導で高成長を謳歌した。中国の高成長が世界の商品相場の需給構造を大きく変えるなど影響は大きかった。しかし、中国の潜在成長率は既に7%台まで低下しており、今後更に下がるという見方が多い。

生産性などで規定される潜在成長率の低下を緩やかにして、李首相が唱える「中高速」の経済成長を今後続けるには多くの課題がある。それらは、多くの面談者と共有できたが、以下ではそれを列挙する。

政府投資依存から脱して家計消費底上げ、都市と農村の格差是正、戸籍改革、高齢化に備えた社会保証制度構築、国有企業など既得権益打破、金融など民間企業への規制緩和と市場経済化、技術革新を果たす民間企業の裾野拡大、環境汚染などの外部不経済への対応、などである。

これらに、中国政府がどのように取り組むのか予想は難しい。ただ、中国などの新興国への中長期的な投資パフォーマンスには、政府によるこれらの問題解決が大きく影響することは確かである。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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