アベノミクスの「第4の矢」

 2020年の東京オリンピック開催が決まった。日本中がこの話題で盛り上がっている。日本経済の活性化にとっても、オリンピックが非常に重要な意味を持つことは明らかだ。オリンピックはアベノミクスの第4の矢となるのでは、という声も聞こえ始めた。

前回の最後に、「次回以降、TPPの各論について、もう少し詳しく論じてみたい」と書いたが、それについては少し延期するとして、今回はオリンピックと日本の経済再生について述べておきたい。

 オリンピックと日本の経済再生について考えるとき、次のような点がポイントとなるだろう。

 一つ目は、安倍内閣の成長戦略のなかで論じられた大都市、とりわけ東京の活性化が、成長戦略のなかで最も重要なテーマになるという点だ。オリンピックは日本全体に関わるものだが、その開催地である東京をどうするのかということが成長戦略では大きなテーマとなる。

 二つ目は、オリンピックの開催が2020年であるという点だ。今から7年後である。偶然ではあるが、政府がプライマリー・バランスで見た財政黒字の実現を目指しているのも2020年である。また、成長戦略によって日本の潜在成長率を上げていくという面でも、7年後というのはその成果を想定するには十分の長さである。

 オリンピックが開催されることで、この7年という目標がより現実的になった。インフラ整備でも制度改革でも、7年以内に実現するという具体的なスケジュールの設定が重要な意味を持ってくる。

 三つ目は、オリンピック開催が、官民、そして国民が一丸となるうえで求心力になりうるという点だ。少子高齢化・グローバル化が進展するなか、日本の社会や経済をどのような方向に持っていくべきか、国民もなかなか確信が持てずにいる。

 オリンピックだけで日本の大きな方向性が決まるわけではない。ただ、オリンピックという目標が目の前に存在することで、東京をそして日本をどのような社会にしていくべきか、国民や民間企業を巻き込んだ議論が盛り上がることを期待したい。