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富田直美 真説・IT考

オリンピック招致で見せた最高のプレゼン
その準備の極意とは

富田直美
【第6回】 2013年9月17日
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シナリオとタレントと表現力の勝利

 多くの読者は、2020年のオリンピック招致の最終プレゼンテーションをリアルタイムまたはアーカイブでご覧になったと思う。

 基本的に日本へのオリンピック招致には反対だった私だが(主に他の発展途上国に国力アップのチャンスを与えるべきとの視点)、プレゼンの下手な日本人がどれだけのプレゼンを行えるかをリアルタイムで見られる機会なので、徹夜をすることにした。

 ちなみに私はAldus Persuasionの使い手として、30年以上前に電子プレゼンデビューを果たし、その後、PowerPointにうるさいユーザーとして、IT企業人として、人生を決める場で多くのプレゼンを行ってきており、『スーパープレゼンテーション』のTEDさながら、プレゼンのプロと呼ばれて来た自負がある。実際20年位前に、PowerPointの宣伝ビデオ(大塚商会制作)に登場したこともある。

 既に多くのメディアで、今回のプレゼンについて論評が出ているが、大筋私も同感であり、今回の日本チームのプレゼンは、他国を説得力で圧倒していた。日本人も本気でプレゼンに取り組めば、言語のハンディキャップがあっても勝てる!誰よりも多く深くリサーチし、準備し、対応すれば勝てる!ことを証明した。

 アジア30ヵ国中28位と言うTOEFL結果が示すように実に最低とも言える英語力の国が、今回は、社交界(オリンピック委員会もその類い)での公用語であるフランス語までも駆使し、逆転したのである。快挙!の一言だ。

 プレゼンのプロ??を自認する私から見ると、日本の勝因は、本番に強い選ばれしタレントが、勝利に向けた完璧なシナリオの中で、喜怒哀楽を伝える表現ができたためと考える。

 後に触れるが、プレゼンでの最初の掴み、雰囲気づくり、プロの言葉で言えばトーン・セッティングが勝利への最高の貢献をされたと考える。高円宮妃の皇室人であるがゆえに醸し出されるのであろう気品と優雅さと美しさがその佇まい(姿勢=Attitude)全てから、特に、そのお顔から醸し出されていた。あんなに素敵な表現ができる方が日本にいらしたのかと、ただただ驚き感動した。一般社会で一般のことをしている平民(こんな言葉は禁句だろうが表現として使いたくなった)には絶対出来ない、天性の輝きと今日までの皇族としての人生で醸成されたものが天才の奏でる旋律のように私の心に響き渡った。

 この方の起用(ただし招致には一切言及していない)が今回の勝利の全てだと言いたい。もちろん、パラリンピアンの佐藤真海選手の喜怒哀楽人生における究極の感謝とポジティブな姿勢を評価しないわけではないが、全ては東日本大震災時のIOCへの感謝と自らのスポーツ団体への関わりのなかでのスポーツの素晴らしさを語った高円宮妃のトーン・セッティングに始まり、安倍首相までの…言葉を道具としては用いているが、心を姿勢で伝えると言うシナリオの勝利である。

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新しいIT技術に基づく製品やサービスは、人間、社会にどんな影響(ポジティブ、ネガティブ)を与えるのか? 先端IT企業9社の経営経験を経て、現在は名門シンクタンクの理事を務め、大学で人間力を教える著者が、わかりにくいITとIT業界の動きを人間力によって立つ問題意識を元に考察する。

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