日本高純度化学(以下、高純度化学)は、電子機器に使われる貴金属めっき薬品の開発・製造・販売を行っている。特に金めっき用薬品に特化し、そのシェアは高い。本社は東京の都心から離れた練馬区にあり、周囲にはマンションなどが立つ。「住宅街に薬品を扱うめっき屋さんかー」とも思うが、インタビューでそのビジネスモデルを知れば、納得できるはずだ。

加えて、同社は1999年に現経営陣が中心となってMBO(マネジメント・バイアウト)を実施したという社歴を持つ。MBOとは経営陣による自社の買収である。このMBOこそが第2の成長期の契機となった。

2009年3月期は、世界同時不況によるエレクトロニクス業界の生産調整の影響で、売り上げは3割減、営業利益は5割減と厳しい決算になったが、それでも売り上げ81.5億円、営業利益は10.8億円を確保した。もっとも、渡辺社長によれば、同社の売り上げにはあまり大きな意味はないという。

世界のIT産業を支える“小さな巨人”<br />日本高純度化学 渡辺社長の経営進化論<br />(前編)
日本高純度化学 渡辺雅夫社長

渡辺社長:わが社は金属めっき用の薬品を作っている会社ですが、例えば、金は1グラムで2500円~3000円します。この金1グラムに対して薬品代は100円ももらえれば、うちとしては嬉しいという感じです。

 お客さんとの関係では、お客さんが金の地金を送ってきて薬品を混ぜて売戻すケースと薬品だけを売るケースがある。金が3000円だとすると、前者では3100円が売り上げに立ちますが、後者では売り上げは100円ということになります。ですから、表面上の売り上げと利益率の関係は、あまり実態を表していない。うちでは売上管理はしていません。薬品出荷量と粗利がリンクしていると考えていただいた方がよい。

 我々はファインケミカルの会社ですが、医薬品やソフトウエア開発の会社に近い。例えば、マイクロソフトはソフトウエアを開発したら、それをディスクに乗っけて売りますね。ディスクの原価なんてたかがしれているが、それを1本何万円で売っている。優秀な人材を集めてソフトウエアを開発すれば、大きな設備投資はいらない。ビジネスモデルが似ているとまでは言わないが、そう考えてもらった方が分かりやすいかもしれません。