9月10日で日本の尖閣諸島国有化から丸一年が経った。中国政府は「領土主権は断固守る」と原則論を振りかざす一方で、「解決させる前に問題を棚上げし、共同開発することが可能だ」とのシグナルも発している。米国にとっても日中の軍事衝突は大迷惑だし、日本の安全保障上も軍事的対決は得策ではない。この機をとらえて、関係改善の道に踏み出すべきだ。

際立つ日本の対中輸出減

 昨年の9月11日、民主党の野田政権が尖閣諸島の魚釣島、北小島、南小島を地権者から20億5000万円で購入し「国有化」して以来1年、中国海警局はその「記念日」前日の10日、巡視船8隻を尖閣付近の日本領海内に入れ、日本の巡視船と併走する光景を中国中央電視台の記者、カメラマンに生中継させた。

 中国国民に向けて、政府が領土、領海を守っていることを示す「海上デモ」であり、海警当局にとっては大衆の人気を博し、予算を拡大するための宣伝の好機だったろう。9月10日までの1年間に日本領海に入った中国公船はのべ216隻、63日に達し、これはもちろん、日本に対する領有権主張のデモンストレーションでもある。

 一方、中国当局は陸上での日本公館、企業に対する民衆の示威行動に対しては厳重な警備体制を取って抑え込み、昨年9月に発生したような破壊行為は起きなかった。中国としては尖閣諸島の領有権は主張するが、日中関係のこれ以上の悪化は防ぎたいのだろう。

 この1年間の対立のダメージは日本の側に大きい。今年1月から6月までの上半期の日本の対中輸出は前年同期比で16.7%(約1兆2000億円)減、中国からの輸入は6.1%(約5500億円)減だった。対中輸出の減少の原因は欧州の不況による中国経済の減速、と報じられるが、それでも全世界に対する中国の輸出は上半期に前年同期より10.4%増え、輸入も6.7%増、GDPは7.6%増だから、日本の対中輸出減は際立っており、その主因は尖閣問題と見るしかない。

 毎日新聞(9月12日朝刊)が報じた企業アンケートでは反日暴動などの影響を受けた在中国日本企業73社中61.6%の企業が業績は「回復傾向にある」と答え、今後の対中投資も「現状維持」が74.2%、「増やす」が15.2%、「減らす」は1.5%に過ぎず、最悪期を脱したことを示している。ただ自動車販売台数は8月にトヨタが前年同月比4.2%減、ホンダが2.5%減で、市場全体が10.3%も拡大する中、日本車がドイツ車、アメリカ車、韓国車に世界最大の自動車市場でシェアを奪われていることを物語る。