革新活動で得られる効果

 業務を可視化し、革新活動をするうえでの狙いや得られる効果を明確にしておこう。

●第1の狙い:「誰もが“目で見てわかる”チャートにすることで業務情報の共有化を図る」

 チャート化することで、目で見てムダに「気づく」ことができる。たとえば、「紙からシステムへと転記するムダが発生している」「複数の部署で類似する業務を行っている「PC上で確認できる資料をわざわざ紙に印刷している」など。

 こうしたムダを一つ一つ排除していくことで、3ヵ月~6ヵ月の期間にほとんどの企業で時間にして20%以上、アウトプットで30%以上の低減といった改善効果が現れ、ペーパーレス化を中心に経費節減も実現する。また、不良や不正のリスク排除、リードタイム短縮(発生時点~完了期間の短縮)といった効果も得られる。

●第2の狙い:「専門性を必要としないでわかる機能図」の作成

 HIT活動を進めることで得られるアウトプットはチャートだけではない。業務の機能を体系化し、業務名と内容を記入した「業務の体系図」を作ることができる。また、業務にかかった時間量、専門性、役割分担の状況を見る「業務管理票」、業務の役割分担と育成計画立案のために各担当者の業務スキルを一覧にした「スキルマトリクス」、管理ポイントを明確にした「業務管理点マニュアル」など、多様なアウトプットを生成できる。

 たとえば業務管理点マニュアルやスキルマトリクスを使って、1人の担当者が幅広い業務をこなせるようにする「多能化OJT」を推進することで、暇な職場の人が忙しい職場へ応援に行くことが容易にできるようになり、業務の偏り対策ができ、人的コスト削減につながる。そればかりか、社員の視野も広がり、社内人脈も生まれていくことになり、それが結果的に各自の専門力向上になる。

 部課長がリーダーシップを発揮して活動を推進していくことで、以上のような課題解決を行えるのがHIT法の効果である。次回は、難しいと思われている課題をどのようにして解決しているか、推進中の具体的実例を解説して紹介する。