甘くしたいなら「塩」を使え!?
素人社長だからこその“逆転の発想”

「ところで、社長は現場で主に何をされるのでしょうか?」

「現場の人たちに言わせると、突拍子もないことを言うのがいいんだ、と」

 先ほどから説明しているように、プラスチック製品を作る工程は「熱」と「圧力」が大きく関係している。その「加減」を心得ているのが、熟練工である。

「相手はプロですから、細かく指示は出しません。1の目盛りを2にしろ、とかは絶対に言っちゃいけないんです」

「では、具体的に何を?」

「たとえば、スイカを甘くしたい時……」

 (ス、スイカ?)

「砂糖ではなく、逆に塩をかけてみたらすごく甘く感じますよね? それと同じで、それまでトライしていたことの真逆をやってみたらどうか、と提案したり」

「なるほど」

「素人ですから、極端なことを言ったりもします。だから、結果も極端に出る。そうすると、現場の人たちはおのずと気づいてくれるんですね。そうか、さっきの失敗はこれが原因だったのかって。向こうはプロですし、経験がありますから」

 現場で作業をしているとどうしても、思考パターンが凝り固まってくる。社長はそんな現場をほぐすため、いい意味での“素人感覚”を持ち込む。それが、ある種の「飛躍」を生み、「成功するような気がする」という現場の人たちの感覚にもつながっていたのだ。

「理想は、営業全員がそういういい意味での素人感覚を工場に伝えてくれることだと思っているのですが……」

プラスチックなのに木でできている!?
新たな商品開発にも意欲

 プラスチックが現在のように幅広い用途に使われるようになるきっかけは、1929年の世界大恐慌である。コストダウンを余儀なくされた企業はこの時、一斉に木や金属などの伝統素材からプラスチックへと切り替えた。昨今はその逆で、プラスチックに自然素材を混ぜ込む取り組みが盛んである。

 そこで、犬飼さんがおもむろにプラスチックのお箸を持ち出して説明する

「たとえばこれなんか、材料の51%は紙でできています。だから、紙と呼んでもいい訳ですが……」

「でもこれ、どう見てもプラスチックにしか見えません……」

「……ですよね」

「ひょっとして、これはここで作ったものですか?」

「いいえ。これは他社の」

 (ガクッ)