株式レポート
9月25日 18時0分
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3カ月は長いか - そして、どっちに転んでも上がる - 広木隆「ストラテジーレポート」

クラブM

先日、いきつけの銀座の店に顔を出した。
「広木さん、お久しぶり。今月、初めてじゃない?(ボトルキープのタグを見て)、あら、今月お誕生月ね!フルーツの盛り合わせ、お店からサービスしますね」
「俺さ、前から思ってたんだけど、フルーツの盛り合わせって女の子が喜ぶだけで、酒のつまみにならないんだよね」
「またそんな憎まれ口きいて。じゃあ、お鮨でも取りましょうか?」
「頼むよ。あと、おでんも食いたいな」
「健ちゃん、お鮨2人前、出前お願い。それから『楓』さんからおでん、もらってきてくれる?ところで広木さん、お幾つになられたの?」
「50だよ」
「えー、全然見えない」
「そういうママこそ、○歳にはとても見えないよ」
「あら、お上手ね。お世辞でも嬉しいわ」
「マジで言ってんだけど。でも、ママ、男も女も30を過ぎると、とたんに老けはじめるけど、なんか、女性のほうが歳をとるのがはやいような気がするんだけど…」
「それは当たり前よ。だって女の35歳は40歳ですもの」

女性の年齢というのは、ゆるーい「ガイダンス」のようなものと思ったほうがいい。あくまで「参考値」としてとらえるべきだ。しかも、その「レンジ」の幅はとても広い。ストラテジストが出す株価予想のレンジ並である。

FRBのガイダンス

先週開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)では量的緩和の縮小開始が見送られた。市場関係者の予想は「今月から縮小開始」一色だったから、市場には大きなサプライズとなった。某著名エコノミストは朝のテレビ番組で、「これから会社に行くのが辛いです」と言っていた。また、別のFEDウォッチャーは、「各方面に懺悔して回ります」と言っていた。彼らの心中、察してあまりある。

ところが、こういう状況になると決まって「全然サプライズなんかじゃない。私は初めからこのタイミングで緩和縮小などできないと思っていた」と言い出す輩が出てくる。そういう連中が必ず持ち出してくるのが、「FRBの言葉を鵜呑みにするなら9月の縮小はない」としていたグレン・ハバード米コロンビア大学教授の言葉である。背景にあるのは、6月のFOMC後のバーナンキ議長の記者会見での発言だろう。量的緩和縮小に踏み切る「条件」として議長は以下のように述べたのだ。

<FOMCが最も可能性が高いと見ている経済的なシナリオは、財政政策やその他の向かい風に起因する短期的な阻害要因が後退し、向こう数四半期にわたり緩やかな成長が加速、こうした動きに支援され労働市場が継続的に改善するというものだ。

また、インフレ率は時間の経過と共に、われわれの目標である2%に向け回帰していくと見ている。

今後発表される経済指標がこの見通しとおおむね一致すれば、毎月の資産買い入れ規模を年内に縮小させることが適切であると、FOMCは現時点で予想している。
さらにその後の経済指標が引き続きわれわれの現在の経済見通しとほぼ一致すれば、来年上半期を通して慎重なペースで買い入れを縮小していき、年央あたりに終了させる。
このシナリオでは、資産買い入れを最終的に終了する時点で失業率は7%近辺となる可能性が高く、堅調な経済成長が一段の雇用創出を支える状況にあるだろう>

「このタイミングで緩和縮小などできないと思っていた」と(後出しじゃんけん的に)言う者の主張は、<FRBはちゃんと量的緩和縮小開始の条件となる「ガイダンス」を提示している、そして経済指標がその条件に達していないのだから、量的緩和縮小が開始されないのは至極当然である>というものだ。つまり、「失業率7%が見えたら」縮小開始、それが見通せない限り縮小はせず、と言っているじゃないか、という指摘である。

ところが、その「ガイダンス」もいい加減なものである。前回のレポートでも引用したが、今回のFOMC後の会見で議長はこう言っている。

<年内に(縮小を)開始する可能性はあるが、そうだとしてもその後のステップは経済の動向に左右される。つまり経済指標次第だ。あらかじめ時期を決めているわけではない。6月に説明した基本概要は変わっていない。
資産買い入れプログラムを終了する基準は労働市場の見通しの大幅な改善だ。前回、ある程度感覚をつかんでもらうために目安になる数字として7%の失業率を挙げた。目指している特別な数字はない。目指しているのは労働市場の全般的な改善だ。>
前回挙げた失業率7%という数字は、「ある程度感覚をつかんでもらうため」であって、「目指している特別な数字はない」というのだ。これでは「ガイダンス」もへったくれもないではないか。
そもそも「ガイダンス」の意味を辞書にあたれば、<不慣れで事情のわからない者に対して、初歩的な説明をすること>とある。過度にFRBのガイダンスに頼るのは、あるいはグレン・ハバード教授流に「FRBの言葉を鵜呑みにする」のは、市場関係者自ら、自分は<不慣れで事情のわからない者>である、というのに等しい。逆に言えば、仮にも「プロ」を自負するなら、「FRBの言葉を鵜呑みに」してはいけないということだ。
量的緩和縮小の開始タイミング

FOMCの結果を巡って市場では混乱が生じている。事実、見送り決定直後、ダウ平均は史上最高値を更新したものの、その2日後には185ドル安の大幅安となった。昨日までダウ平均は4日続落、その間の下げ幅は340ドルに及ぶ。185ドル安の急落となったのは、10月のFOMCでの緩和縮小の可能性に言及したセントルイス連銀のブラード総裁の発言がきっかけだった。しかし、冷静に考えればこの市場の反応は過剰と言える。10月の緩和縮小開始は常識的に考えてあり得ないからだ。なぜなら量的緩和縮小に踏み切るほどの確証が得られない、もうしばらく米国経済が回復しているかを見極めたい、という理由で9月の緩和縮小を見送ったのであるわけだから、それがたった1カ月のうちに「確証」が得られたり、米国経済が回復しているかを見極めたりすることができるわけがない。たった1カ月で米国経済の状況が劇的に改善するものではなかろう。そういう状況で仮に量的緩和縮小に踏み出せば、今度こそFRBの威信は地に落ちる。

現在のところ、市場の観測は12月の緩和縮小開始というのが主流となっている。しかし、その伝で言えば ― その伝とは、たった1カ月のうちに「確証」が得られたり、米国経済が回復しているかを見極めたりすることができるわけがないというものだが - 1カ月が3カ月であっても同じことではないか。たった3カ月で何が変わるというのだろう。

3カ月は長いのか。あるひとにとってはじゅうぶん長い時間と感じるだろう。またあるひとにとっては、あっという間に感じられるかもしれない。果たして、「3カ月」はFRBにとって経済の変化を判断するのにじゅうぶんな時間であるのだろうか。

そうこうするうちにバーナンキ議長は退任を迎える。量的緩和縮小の決定は後任議長に委ねられるかもしれない。後任の議長はイエレン氏だろうか。仮にイエレン氏が後を継ぐとすれば、ハト派で知られる彼女は緩和縮小の開始を急ぎはしないだろう。まして、新議長として着任してすぐに、世の中をひっくり返すような重大決定を主導するとは思えない。誰だってしばらく様子をみようとするだろう。

そのタイミングで緩和縮小を見送ってしまうと、米国景気は春から初夏にかけて弱含むという季節サイクルにぶつかる。その時点で出てくる指標は弱いものが相次ぐかもしれない。下手をするとこの先1年くらいは緩和縮小が始まらない可能性はじゅうぶんにある。

一方、FOMCでの投票権をもつ連銀総裁の顔ぶれが変わるのも不透明要因で先行きを読みにくくする。2014年になると、ハト派であるエバンス・シカゴ連銀総裁とローゼングレン・ボストン連銀総裁が投票権を失い、代わりにタカ派であるプロッサー・フィラデルフィア連銀総裁とフィッシャー・ダラス連銀総裁が投票権メンバーに入ってくるのだ。

どっちに転んでも

まさに米国の金融政策の行方は混沌としてきた。しかし、はっきりしていることがある。
ひとつは、繰り返しになるが、早期のテーパリング開始はなくなったというものだ。9月のFOMCは何もなかった。しかし、何もアクションをとらなかったことは<中立>ではない。現状程度の経済の状況ではテーパリングを開始できない、ということを市場に示したのである。で、あるならば、米国景気の状況が、明らかに現状から改善していることが認められるまで、テーパリングは行えないということだ。僕は、今回の見送りでFRBはかなり政策発動の柔軟性を失ったと思う。

FRBの量的緩和策の今後について整理すると、シナリオは以下の4通り以外にはあり得ない。
1.量的緩和が拡大する(QE4)
2.現在の量的緩和(QE3)が当面継続される
3.量的緩和縮小(テーパリング)が開始される。その場合、縮小幅は100〜150億ドル程度の小幅なものにとどまる
4.量的緩和が大幅に縮小される

現状から判断して、シナリオ4というのは一足飛びであって可能性はかなり低い。無視しえるシナリオだろう。シナリオ1も、可能性としてないことは否定できないが、現状、その可能性は相当に低い。結局、シナリオの2か3ということになる。つまり、小幅なテーパリングが開始される時期の問題だろう。

量的緩和継続なら株式市場にとってポジティブである(実際、相場はそのような反応を示している。テーパリング見送りを受けて最高値を更新し、10月にテーパリングの可能性に言及したブラード発言で急落)。

では、シナリオ3ならどうか。これは既に一回、市場が織り込んだシナリオである。

米国株はFOMCの結果が出る直前、史上最高値圏まで戻っていた。緩和縮小が打ち出されても小規模なものにとどまるなら相場への影響は軽微との見方からである。ではなぜ、10月にも縮小の可能性ありというブラード総裁発言に過剰反応して急落したのだろうか。要するに、一旦織り込んだシナリオが白紙に戻り、先行きが不透明になったことを嫌ったのだろう。相場にとってのリスクとは不確実性なのだと改めて思い知らされる。

そうであるなら、テーパリングが開始される状況が明らかとなれば、それはそれで「不透明要因=リスク」の払拭ということで、相場の上昇要因であろう。まして、9月FOMCでのテーパリング見送りという<儀式>を経た以上、テーパリング開始時には、「誰の目から見ても明らかな」米国景気の改善が示されているはずである。(くどいが、そういう状況にならなければ量的緩和を縮小できないように追い込んだのはFRB自身である。)ということは、前回も述べたように、テーパリング開始=米国景気盤石というシグナルであり、ますます株価の上昇要因である。

こう整理すれば、量的緩和が続いても(シナリオ2)、また量的緩和が縮小されても(シナリオ3)、どっちに転んでも株は上がるということである。

FOMC後の会見で、バーナンキ議長の発言がぶれているような批判を書いたが、もう間もなく議長の座を降りるバーナンキ氏の名誉のために、彼の主張が一貫している点も再確認しておこう。それはQE3の行方はあくまでも経済指標次第であらかじめ決められたスケジュールはない、と繰り返し述べている点である。でも、それも当たり前といえば当たり前なのだ。QE3は開始当初からその特徴は「オープンエンド型」にあった。QE1、QE2には購入総額に上限を設けたのに対し、QE3はインフレが抑制される限り、失業率が改善するまで無期限に購入する「オープンエンド型」であるのだ。だから、あらかじめ決められたスケジュールがない、というのはQE3そもそもの特徴を言っているのに過ぎないわけである。

一貫しているといえば、妻は娘から年齢を聞かれると、ずっと32歳だと言ってきた。
年少の時:「ママ、何歳?」「32歳よ」「わー、マミちゃんのママと同じだ!」
年中の時:「ママ、何歳?」「32歳よ」「へー、パパとずいぶん歳が離れてるのね」
年長の時:「ママ、何歳?」「32歳よ」「あれっ、去年も32だったよね?」

娘が幼稚園の時はなんとか誤魔化してきたけど、小学校1年生ともなると、さすがに騙しきれない。
「ママって、何歳だっけ?」「32歳よ」「ふーん。全然、歳をとらないママって、魔女みたいね」

さすがは僕の娘だ。半分、当たっている。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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