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9月26日 18時0分
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インフレ到来と住宅購入の判断〜分けた方がよい〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

来週の重要経済指標、主要企業決算についてPDF版のレポートで解説しています


先日、日頃コンタクトしている新聞・通信社のメディアとは異なる、住宅業界関連の方からの取材を受ける機会があった。これまでほとんど縁がなかったが、住宅購入という人生の大きなイベントを控える方向けに、アベノミクスと経済環境の変化について意見や見方を求められた。

普段、筆者は投資家の立場に立って、マーケットや経済動向や政策を語っているが、住宅購入を考える方の目線で今起きつつある経済動向を語って欲しいとのこと。そして、今後の経済やインフレ見通しに加えて、経済環境の変化や消費増税を控え、「住宅を今買うべきか」「住宅ローンはどうすれば良いか」など考えている方へのメッセージを依頼された。

取材いただいた方は、これまでの拙著などから、筆者がアベノミクスを評価し、今後インフレ到来を想定している、ことをご存じだった。だから、「デフレが終わりつつある中で、今後住宅価格は上がる(=住宅は今買いですよね)」「金利も上昇する(=住宅ローンは固定金利が無難かも)」などの意見を求められていた(少なくとも筆者はそう感じた)。

もちろん、長年のデフレが止まり経済全体が拡大に転じるととともに、株式や不動産など実物資産への価格上昇圧力が強まる。であれば、「現在の価格は大底なので、住宅購入する良いタイミング」「今後住宅ローン金利も上昇する」などはリーゾナブルな考えである。だから、取材先の意図に応じて、質問にも素直に応じようかと考えた。その方が、取材する方も、記事を書きやすいだろうし。

ただ、先に述べたが、この記事は、人生の大きな決断である住宅購入を考えている方に読まれるとのこと。筆者は、住宅業界の専門家でもないし、今後日本経済がデフレからスムーズに脱しても、実際に日本全体で住宅価格がどこまで上がるかは正直分からない。

そもそも地域によって、住宅需給を取り巻く状況は全く異なる。また、新築物件は相応のプレミアムが上乗せされて販売されており(どの程度か詳しくないけど)、このプレミアムもいろいろだろう。個々の物件の要素が違うのだから、記事を読まれた方が購入を考えている住宅価格が、実際に上がるかどうかは分からない(筆者なら、想定投資利回りから適正価格を判断するが..)。だから、インフレが訪れて経済状況が好転しても、住宅価格が下がるケースも多いだろう。

また日頃レポートなどで情報をお伝えしている、百戦錬磨の個人投資家の方々ほど、この記事を読まれる方は市場や経済全般に対する知識は深くないかもしれない。なのに「住宅価格は大底だから今が買い」「住宅ローン金利も今後上がる」というシンプルなメッセージだけが届いてしまうのは、記事を読まれる方々そして筆者にとって良くないと考えた。

そこで、取材において、以下のような考えを強調した。

経済環境がデフレからインフレに変わることは大きな変化だし、住宅価格や住宅ローン金利は今後上がる可能性が高い。ただし、インフレ到来で、単純に住宅価格や金利だけが上がるわけではない。

メディアなどでは、「身の回りのモノの価格」だけが上がるかのように伝えているが、それはインフレを曲解しているだけで「個別の価格変動」。インフレになれば、働く人の賃金も上昇する。インフレとともに経済の正常化が進めば、一生懸命働く人ほど所得が上がり易くなり、住宅購入を検討する人が増える、望ましい経済環境が訪れる。

だから、インフレが到来して、仮に変動金利でローンを組んでも、賃金が上昇してローン負担もカバーできるケースが多い。また、住宅は希少性が高いため、賃金よりも価格上昇ピッチが早いかもしれないが、それは物件次第である。

なので、住宅購入を決断する際には、「気に入った家に住む」という消費活動に見合う、価格で販売されているかどうかが最も重要。今後住宅価格や金利動向は些細な要因で、むしろ「価格上昇」などの雰囲気に踊らされると、本来より高値で買うことになりかねない。「価格」と「消費の満足度」を比べて、シンプルに判断するのがベスト。



筆者のこの考えに対して、取材する記者の方はやや意外な顔をされていた。この取材では、アベノミクス、経済やインフレ見通しなどいろいろな点を説明したので、どこまで筆者の真意が伝わったかは自信もないし、この考えが記事の中でどこまで掲載されるか分からない。

なお、インフレ到来と日本人の住宅購入の判断は分けて考えるべきと筆者は考えているが、一方で、インフレ到来は「金融資産の選択と投資パフォーマンス」には決定的な影響を及ぼすことは言うまでもない。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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