本連載のはじめに「米国の保護膜」そして「米国ありきの日本」ということで、日本と米国の関係について話をしましたが、中国を見るうえでも、中国と米国との関係は重要なポイントです。中国と米国の関係につきましては、私よりもっとグローバルな視点をお持ちの方がとても参考になる論点を提示されています。

日本人が知らない
もたれあう中国とアメリカの実体

 山崎養世さんが書いた『米中経済同盟を知らない日本人』という本は、中国と米国の経済上のもたれあい関係が分かりやすく分析されています。主な内容は以下の通りです。

1.米国企業は、安い労働力を有する中国に米国流マネジメントを持ち込み、戦後日本経済の台頭後、初めて日本と対等に競争できる製造現場を獲得、中国発米国及び世界に対する輸出を増大させた。

2.それにより米国企業は好業績、株価の堅調を維持し、株価の堅調は、米国の消費の堅調、米国の消費の堅調は世界の景気を牽引した。

3.中国は、米国を懐に呼び込むことにより輸出力の増大、外貨の獲得、経済成長の実現、そして、米国として中国の現体制を支持せざるを得ない戦略的環境を実現させた。

4.また、本来自由な為替体制であれば、輸出が増えれば人民元高になり、上記の好循環も自然と安全弁が働き、調整局面を迎えるはずであった。しかしながら、人為的に操作されている人民元は長い間安く据え置かれ、結果、本来ありえない、長期間に及ぶ不況なき、世界経済の成長が続いている。

5.一方で、本来ありえない、終わりのない経済成長の循環により、世界レベルでの環境破壊(米国と中国は資源浪費の2大大国ともいえる)、過剰流動性によるバブル経済という負のエネルギーが蓄積されている側面もある。