人間ドック費用は高いのか。メニューは一般に、午前中から検査を始めて昼前に終わる「半日ドック」、昼ごろまでに検査が終わり、午後は大部分の結果の説明と生活相談を行う「1日ドック」、2日間にわたって詳細な検査を受ける「1泊ドック」などがある。費用は1日ドックで4万~5万円、プレミアム病院を選ぶとその2~5倍かかるが、年1回のメンテナンス費用と考えれば納得できるのではないだろうか。

 ではどこで受診すればいいのか。松井氏は「万が一病気が発見されたときに、そこで治療を受けたいと思える病院がいい」と言う。といって遠方では検査に出向くのがおっくうだし、治療のための通院が面倒になるので、自宅近くで見つけることができればベストだ。最近は人間ドック専門病院(あるいは専門棟を備えた病院)も増えてきた。「日常の診察がない(一般患者がいない)のでくつろいだ雰囲気で受診できるので、より正確な数値を得やすいでしょう」。

「異常なし」は7.2%
誰でも病気を抱えている

 日本人間ドック学会によれば12年の全国の受診者約316万人のうち、全項目で異常がなかった人の割合はわずか7.2%しかない。40歳を過ぎれば誰でも病気と付き合うことになるのである。

 そこで「人間ドックで発見した臓器別がん人数の推移」(図)を見ると男女とも1990年代から胃がん、前立腺がん、肺がんなどの発見数が増え、95年からは大腸がん検診に便潜血反応が導入されたことで大腸がん発見数が急増、また女性は近年、乳がんの発見数が激増している。それは私たちが、がんにかかりやすくなったのではなく、検診精度の向上や新しい検査法の導入により早期発見数が増えているためと日本人間ドック協会では分析している。

 脳梗塞などの脳の病気をMRI(磁気共鳴画像)検査などで見つける「脳ドック」も受診者が増えている。松井氏は「くも膜下出血で倒れた家族がいる人は脳動脈瘤のできやすい体質などが遺伝する場合があるので40代で受けておくと安心でしょう。何も見つからなければその後は5年ごとに検査を。そうでない人は50歳でもいいと思いますが、動脈瘤が見つかる確率がゼロではないので、発見されたときにパニックを起こさない覚悟が必要です」。

 人間ドックは毎年、脳ドックは5年ごとに受けることが望ましい。そして検査結果を蓄積して数値の変化にいち早く気づける態勢をつくる。

「ただし人間ドックは受診時点までの健康状態を判定するもので、そこから先の健康を保証するものではないことを理解してください。体調に異変を感じたら、人間ドックで大丈夫だったからと自己判断せずに診察を受けてください」。それがビジネスパーソンの健康管理の極意だ。