相続財産の評価額を下げる上で、最も有効なのは不動産活用である。預貯金や現金は金額そのままに評価されてしまうが、不動産なら用途や形状、敷地に面する道路の状況などによって、路線価評価よりも下げることができるからだ。

 具体的な生前の対策として曽根氏が挙げたのが、図に示した“六つの方法”だ。

「例えば、生前贈与には相続税よりも税率が高い贈与税が課されますが、婚姻20年以上の配偶者に自宅を贈与する場合、2000万円(暦年贈与を合わせると2110万円)まで無税となります」(曽根氏)

 また、賃貸不動産を経営している場合、長年の家賃収入が現金で積み上がり、相続税を納めなければならなくなることもある。だが、不動産そのものを生前贈与しておけば、家賃収入は配偶者や子どものものとなるので、相続税がかかる心配はない。

 このように、現金ではなく不動産として生前贈与することは、節税の有効な手段となるのだ。

“争族”対策にも
生前の土地活用が有効

 相続にまつわるもめ事はいろいろあるが、特に多いのが被相続人の自宅を、誰が、どのように相続するのかという問題だ。

「財産を等分にする前提はあっても、介護などで貢献した人が相続の寄与分を主張するケースも少なくありません。一つの不動産を複数の相続人が奪い合う悲劇を起こさないように、自宅を売却して複数の不動産に買い替えるのも解決策でしょう」(曽根氏)

 遺族の将来の暮らしを心配するのなら、利用価値の低い土地を売却して、収益力の高い賃貸不動産に買い替える方法もある。

「更地よりも賃貸不動産のほうが評価は下がりますし、不便な土地よりも人口密度の高い地域に賃貸物件を所有したほうが収益力は高まります。1棟にこだわらず、区分所有する方法もあるでしょう。あらかじめ複数戸のマンションに分割しておけば、遺産分割のもめ事も避けられるはずです」(曽根氏)

 相続税納税者の保有資産の大半は不動産だといわれるが、そうした人はなおさら、不動産や現金を有効活用して節税や“争族”対策を打っておくことが重要だ。