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日清食品HDは、新任管理職を無人島に放り出す
とてもユニークで、とても意義のあるサバイバル研修

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第48回】 2013年10月4日
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 この会社に入って出世したかった――、と思った記事だった。

 日清食品ホールディングスである。以下は社名を日清食品と記させてもらうが、日清食品では、管理職に昇格すると、瀬戸内海の無人島に放り出されるのだという。携帯電話をはじめ、腕時計も財布も全て取り上げ、二泊三日のサバイバル生活を体験するのだそうだ。

 与えられるの食料は、チキンラーメン三袋と米、小麦粉、そして水だけである。
 食料以外には、釣り糸と針、ビニールシート、紐、火起こし器のみが与えられる。

 実に楽しそうな研修だが、このサバイバル体験は“負けず嫌いの骨太な管理職”育成を目的に、二〇〇三年から行なっているとのことだ。部下を引っ張ってゆくのに必要なのは知識だけではない。心身両面での強さが必要だ――、と考え、安藤宏基社長が提唱した。いい会社だな、日清食品って。

 夏の終わりに行なわれるサバイバル体験には、毎年、二〇人ほどが参加するが、火起こし器とは言っても木を擦りあわせて火を起こすだけの機具なので、数人に分かれたグループでは、火起こしだけで二、三時間も格闘するのだという。ますます楽しそうだ。

 お湯を注いで三分待てばできあがるのがチキンラーメンだが、そのまま食べていては味気ない、と思うのか、砕いた麺を米にまぜて炊き込みふうにしたり、魚や貝やカニを捕って添え物にしたり、練った小麦粉でパンを焼いたりと、参加者は食事に工夫を凝らすのだそうだ。

 が、それも火を起こせてのこと。火を起こせないグループは、食事抜きになるか、チキンラーメンをばりばりかじるか、のどちらかになるのだとか。

 そうやって、ただ食べるだけの準備に何時間もかけるような苦労をしているうちに、戦後の食糧難の時代、もっと手軽にラーメンを、と考えた創業の原点に参加者は思いを馳せるようになるのだそうだ。

 食事の準備だけでもたいへんなのだが、寝床作りもまた苦労の連続らしい。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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