橘玲の日々刻々 2013年10月8日

プレゼン型の意思決定は、日本では責任回避の道具
[橘玲の日々刻々]

 2020年の夏季オリンピック開催地が東京に決まり日本じゅうが沸いていますが、ここで注目されたのがIOC委員会での最終プレゼンテーションです。とりわけパラリンピック走り幅跳びのアジア記録保持者で、東日本大震災の被災者でもある佐藤真海さんのスピーチがIOC委員のこころを大きく動かしました。

「プレゼン」という言葉がテレビのワイドショーで繰り返されたのは、おそらく前代未聞のことでしょう。なぜならこれまで、日本の社会にはプレゼンなど必要ないとされてきたからです。

 サラリーマンなら誰でも知っていますが、日本の会議にはそもそも議論というものがありませんでした。根回しによってあらかじめ結論は決められており、会議とはそれを各部門の責任者が了承する儀式だからです。この根回しを組織の外に拡張したのが談合で、公共事業の入札では、各社が見積もりを出す前に落札先が決められていました。

 根回しや談合でないと意思決定できないのは、日本が同質性が強く退出の難しい社会だからです。いったん恨みを買うといつまでも尾を引くのであれば、全員が納得するような解決策を探すしかありません。

 日本型の組織では、上司の意を受けて現場が方針を決め、トップがそれを追認するかたちで意思決定してきました。もっとも、この手法が非効率で遅れているとは一概にいえません。旧日本軍は戦術だけあって戦略のないまま戦線を拡大し国家を破滅に導きましたが、戦後日本の製造業は現場主義のマネジメントによって世界を席巻しました。

<執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。

 




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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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