日産自動車は投資ファンドを活用する新たな手法で国内販売会社の再編に乗り出す。

 対象となるのは老舗地場資本販社の大阪日産と、日産直営販社で全国トップクラスの売り上げを誇る日産プリンス大阪。先月、投資ファンドの日本みらいキャピタルが51.3%、日産が46.2%、大阪日産が2.4%を出資して新会社を設立、年内に大阪日産と日産プリンス大阪は新会社の傘下に入り、店舗の統廃合を進めていく。

 両販社とも黒字経営ではあるが、合わせて100以上ある店舗は近接する場合が多く、一方で大阪南部は手薄だった。統廃合により効率が高まると同時に、売り上げ1000億円規模の販社となり、スケールメリットも追求できる。

 日産に限らず多くの販社の経営は決して良好とはいえず、これまでも各メーカーは自力で販社の再編を促してきた。そのなかで今回、日産が日本みらいキャピタルに期待するのは、単なるニューマネーの出し手という役割だけではない。

 日本みらいキャピタルは2002年、日本政策投資銀行の支援を受けて日本初の事業再生ファンドとして設立。安嶋明CEOは前職で英国日産のファイナンスを手がけた縁で、長年にわたり日産側と国内販売体制の変革の必要性を共有してきたという。「販社は新車販売に頼ったビジネスから、収益性の高いアフターサービス、中古車、金融販売事業の割合を高めることが求められている」(安嶋氏)。

 これらの変革に事業再生のプロがそのノウハウと人材を、ある程度の時間をかけて投入し、経営を健全化する。そしておおよそ4~5年で地場資本販社に主導権を移す計画だ。そこには、メーカー直営ではなく地場資本販社を優先させる日産の基本方針と、販売奨励金を投じて維持してきた全国の販売網を、もはやすべては支え切れないという本音も垣間見える。

 新たなチャレンジは国内販社再編の画期的な道筋になるだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

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