経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第41回】 2013年10月15日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【梅田望夫氏×武田隆氏対談】(後編)
2015年ソーシャルメディアの真価が問われる!?

ベストセラー『ウェブ進化論』著者が『ソーシャルメディア進化論』著者に訊く!

武田隆氏率いるエイベック研究所がオンラインコミュニティの開発に着手したのが1998年。SNSの雄・フェイスブックが産声を上げたのが2004年。この間、企業と消費者をつなぐコミュニケーションのかたちは大きく変容してきた。ではこの先はどうだろう?梅田望夫氏とともに、ソーシャルメディアの真価が問われるような変化が到来するであろう近未来に目を向けてみよう。

「あなたじゃなくてもいい」と言い合う、企業と顧客

梅田望夫(うめだ・もちお)
1960年生まれ。慶應義塾大学工学部卒業。東京大学大学院情報科学修士。コンサルティング会社「ミューズ・アソシエイツ」をシリコンバレーに設立し、日本のIT起業家に対する支援やマネジメント・コンサルティングを行う。2006年には『ウェブ進化論』でパピルス賞を受賞。「観る将棋ファン」を自認し、将棋の普及に関わる活動にも広く携わる。

梅田 武田さんがオンラインコミュニティの研究・開発を始めたのは1998年。グーグルが創業した年でした。そこから2000年代半ばまでは、グーグルが興隆したオープンインターネットの時代でした。そんななか、クローズドな企業コミュニティの開発・運用にずっと取り組んできたというのは、時代の変化と違う動きでした。それは、あえてそうしていたのでしょうか?

武田 あえて、という意識はなかったと思います。2000年にとりあえずシステムが完成したときは、そもそも、オンラインコミュニティというものに取り組んでいる企業がほとんどなかったので、他を意識することもなかったというか……。完成したといってもα版だったので、その改善に集中せざるをえなかった。時代を意識する暇がなかったんですね。あと、とにかく途中から「もう止められない」とやけくそになっていったので……(笑)。

梅田 SNSの勃興よりも、だいぶ前に始められていますもんね。フェイスブックの創業が2004年ですから。やっぱりフェイスブックは脅威だった?

武田 フェイスブックは私たちにとって初めてのSNSではありませんでした。フェイスブックが出たころにはSNSのネットワーク構造は把握できていたので、脅威は感じませんでした。逆に、SNSの利用者が増えれば私たちのビジネスもやりやすくなるなと思いましたし、実際そうなりました。

 怖かったのは、フェイスブック以前に、グーグルが2003年に「orkut(オルカット)」というSNSを実験的に開設したときですね。あれは衝撃でした。初めて触れたSNSがorkutだったので、私たちのつくっているコミュニティと同じようなものを感じ、天下のグーグルと同じことを考えていたんだ! という嬉しさがありましたが、同時に、1998年ごろに押し寄せたインターネットの潮流にあっけなく飲み込まれてしまったときの寂しさを思い出し、orkutと自分たちのコミュニティの違いもよくわからないまま、グーグルに先にやられてしまったという恐怖で……。orkutを見た日は、お酒を飲んだわけでもないのに、会社からどうやって帰ったのか覚えていないです。

梅田 orkutはやはり、大きな脅威だと感じたんですね。

武田 はい。でも、落ち着いてよく考えてみたら、orkutがフェイスブックと同じように、人と人をネットワークで結んでいくのに対し、私たちのシステムは「部屋」でつないでいくというコンセプトだったので、違いがあることに気づいたんです。そこからSNSを徹底的に分析しました。

梅田 エイベック研究所ではこれまで、それぞれの企業コミュニティが活性し、よりすばらしいものになるように、モデレーターをひとりずつつけてサポートしてきましたよね。それは当初の、コンシューマ向けにシステムを開放するという方向から変わってきたわけですね。

武田 そうせざるをえなかったというのが正直なところです。構想段階では、プラットフォームをつくれば、みんな会話したいはずだし、企業も顧客もつながり合いたいだろうし、勝手にどんどん使われると思っていたんです。それこそSNSみたいに。でも現実はまったくそうではなくて(笑)。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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