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2030年のビジネスモデル

多品種・多頻度の開発に背を向けて高付加価値を追求――池内タオルの世界で最もピュアなビジネスモデル

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第10回】 2013年10月17日
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ワインのようにタオルを楽しむ

 収穫年次を区切り、その年にとれたオーガニック・コットンのみから作るタオル、名付けて「コットン・ヌーボー」。ワインのように毎年違う個性を楽しむ。無駄な装飾を施さず、素材の風合いだけに集中できるように、収穫年次の西暦年号だけがデザインされている。タオルを、産地や育て方、作り方によって値段に大きな差がつくワインに見立てた斬新な発想だ。これを生み出したのは、愛媛県今治市に本拠を置く従業員30人のタオルメーカー、池内タオルである。

コットン・ヌーボー。収穫年次の西暦年号だけがデザインされている

最小限の環境負荷で、最大限に安心なタオルをつくる

 普通、タオルは、異なる収穫年次の綿花から、異なる種類の綿糸を紡ぎ、それらを合成して作るのが常識である。そのほうが品質が安定し、紡績会社もタオルメーカーも生産効率が良い。ところがコットン・ヌーボーの原材料となるタンザニア産のオーガニック・コットンは農作物なので、品質は毎年同じではない。良質の綿花が豊穣な年もあれば、不作の年もある。減綿の年はどうするのか、タオルメーカーとしては不安が尽きない。

 しかもコットン・ヌーボーに使われるオーガニック・コットンの収穫には、「枯葉剤」を一切使っていない。人の手でひとつずつ摘み取っている。タオルの原材料となる白く小さな綿が実るのは八月で、このとき葉は青々しており、一緒に刈り取ると葉の緑色が付着して白い綿花が汚れてしまうのだという。そこで通常は、枯葉剤を散布して一気に葉を落としてから、機械で綿花を一斉に刈り取るというやり方をする。だが、枯葉剤を使うために、綿花畑は荒廃し、土壌汚染が進んでしまう。これを回避するため、池内タオルではわざわざ手間と時間のかかる手摘みの収穫法にこだわっている。

 しかしこんな非効率なやり方をしていたら、現地の農業従事者は稼ぎが悪くなってしまう。そこで池内タオルでは、現地の農業従事者が毎年継続的に生活できるように、フェアトレードで綿を高く買い取っている。

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齊藤義明[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

facebookページ:https://www.facebook.com/yoshiaki.saito.1042

 


2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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