人生を変えたスタンフォードMBAの授業

 私の人生を変え、やがてポジティブ・インテリジェンスという概念の発見へとつながる転機が訪れたのは、スタンフォード大学のMBAの授業で11人のクラスメートと円陣を組んで座っていたときのことだ。それはインターパーソナル・ダイナミクスという授業で、グループ内のやりとりはすべてぶっつけ本番、自分の思っていること、考えていることはすべて言葉に出すというのが約束事だった。

 そんななか、あるクラスメートが私に向かって不安げな表情で言った。私から裁かれているようで気が重くなることがよくあるという。私は貴重なフィードバックに丁重に感謝を述べつつも、心の中では「裁かれているって? このまぬけ、お前はこのグループのなかで最低の負け犬だ。裁かれて当然だ」と思っていた。

 みんなの関心が次の話題に移ろうとしていた瞬間、別のクラスメートが私に向かって似たような感想を述べた。私はうなずき、この女性にも丁重に礼を述べつつ、こいつは2番目に鈍いまぬけだと思っていた。それから3人目、4人目が同じことを私に向かって繰り返した。さすがに私も不愉快になり、腹が立ってきた。それでもまだ、彼らのフィードバックをまともに受け止めてはいなかった。しょせん負け犬どもの遠吠えだくらいにしか思っていなかった。

 そのとき、左隣に座っていた私の尊敬する友人が不愉快そうに立ち上がり、円陣の反対側に席を移した。あとでわかったのだが、彼は私が心からフィードバックに感謝していないことを見抜いていた。人を裁く態度を指摘されても本気で受け止めようとしないことに苛立ち、隣にいるのがいたたまれなかったのだ。彼自身も、プラスに評価されていたとはいえ、私に裁かれていると感じていたという。私が本当の彼を見もせずに、ひたすらまつり上げていることを腹立たしく感じていたのである。