
出版不況と言われる中、小説やコミックを「コンテンツ」として、デジタル端末に載せる動きが加速している。特にコミックは、若いデジタル世代にも馴染みの深いコンテンツだ。電子コミック市場はその規模250億円ともいわれ、成長の見込めるマーケットといえるだろう。
そんな中で、出版社の垣根を越えた共闘の動きも出始めた。
今年7月に発足した「リブリカ」は、角川書店、講談社、小学館、集英社が参加し、京都のゲーム企業・トーセと共同出資したコンテンツ配信会社だ。家庭用ゲーム機「Wii」のショッピングチャネルでダウンロード購入できる「Wiiウェア」を使ったデジタルコミックの発信を、2009年春を目処にスタートさせる。「Wii」から「ニンテンドーDS」に持ち出す機能も検討中という。
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| Wiiを使ったコミック配信開始は09年春の予定。ゲーム感覚でコミックの世界観に出逢える仮想空間の設立も計画されている。 |
いわばライバルとしてしのぎを削ってきた出版大手が手を携えたことは、注目に値する。もちろん各社とも、デジタル化したコミック・コンテンツを、既に自社サイトなどで展開している。しかしユーザーからすると、お目当てのコミックに辿り着くには、どの出版社のどのコミック誌発なのかを知っておく必要も出てくる。その点、リブリカのような共通プラットフォームがあれば便利だ。
また、この連携の裏には、コミック出版各社の「海外志向」が透けてみえるようにも思える。日本の「マンガ」は既に潜在力のある輸出品目だが、海外読者への浸透を図る上では、共通プラットフォームが不可欠。そのインフラ整備のための連携であるとも考えられる。
もうひとつ着目したいのは、リブリカが、数ある端末の中から「Wii」を選んだ点だ。日本では、活字コンテンツ専用の電子端末、いわゆる「電子ブック」がいまひとつ浸透していない。米国でアマゾン発の電子ブックが人気を集めていることと比較すると、その傾向は顕著だ。そう考えると、専用の端末ではなく、すでに普及している既存の端末にコンテンツを「載せる」ほうが普及は早い。
そう考えると最有力候補は「ケイタイ」となるが、リブリカが携帯電話ではなく家庭用ゲーム機を選んだのは、なぜか? それは、同社がケイタイ世代よりも上の層を狙っているからではないだろうか。当初のラインナップが旧作マンガ中心となれば、大人世代がコミックの「大人買い」をしてくれるという期待感もある。
出版や音楽業界のビジネスモデルは急速に「コンテンツビジネス」へと移行している。だが、リブリカの出現は、旧来の紙メディアを否定するのではなく、デジタル化を出版ビジネス活性化の一助にしようとする“したたかさ”を示すもののようにも見える。
(梅村 千恵)
