株式レポート
10月15日 18時0分
マネックス証券

米国の政治混乱とリスクの取り方 - 村上尚己「エコノミックレポート」

10月7日レポート「リスクをとれるチャンスかを考える」では、米国の政治混乱(政治ショー?)に起因する株安は、過去2年同様にリスク資産への投資チャンスである可能性を指摘した。そう考えた一つの理由は、株価下落をうけたメディアの報道が悲観に振れ過ぎたシグナルにみえたことだ。

また、グラフで示したように、米国市場で債務上限を巡る報道で株価が下落する一方、この時米債券市場では長期金利は2.6%前後で安定していた(グラフ参照)。債券市場の落ち着きに加えて、「債務上限問題」がテーマになる中で、危機時に買われる金先物価格が下落していた。少なくとも2011年のような欧州発の金融システム不安が懸念され、金が大きく買われていた時と異なり、金融市場全体でみれば、冷静に政治混乱をとらえていたのだろう。


ただ、株式市場はその時々のテーマや雰囲気で揺れ動くことが往々にしてある。先々週から、米株式市場がこの問題を巡る報道を材料に日々の変動が大きくなり株価も急落したが、「政治ショー」に対して悲観に振れすぎたのだろう。その後、先週半ばから米国株市場は反発している。政治に起因するリスクテイクのチャンスだったという、典型的パターンだったのかもしれない。

今週に入って、債務上限や政府機関閉鎖問題において、オバマ大統領と共和党の間で一定の条件付きで合意するとの観測報道がでている。ただ、この問題が収束に向かうことは、株高に更に弾みをもたらす要因かどうかは冷静に考えた方がよいだろう。混乱が一旦収束しても、再び協議が難航する可能性があるし、仮に問題が落ち着いても、それが米経済回復をもたらすわけではない。米国の政治ショーは、短期的な相場かく乱要因として下値で拾う投資機会を生む材料と割り切った方がよい。

なので、今週に入ってからのように株価反転がみえてから、米国政治を材料に株高を後追いするのは、あまりお勧めできない。更なる株高を想定して投資するにはファンダメンタルズの状況との比較で、投資できるかという観点が必要になる。株式市場は、そうした平時のフェーズに戻りつつあるということだ。

さて、肝心のファンダメンタルズだが、米国経済については、9月分の経済指標の多くが依然発表されておらず、正確な判断が難しい局面にある。9月分が判明している分については、製造業景況感指数や米雇用関連指標は改善が続く一方で、家計の心理や個人消費などで改善が滞る指標がいくつかある(グラフ参照、この点は今月のマーケットの歩き方を、今週公表するのでご覧頂きたい)。


2か月前までは、ほとんどの米国の経済指標が改善を示していたが、9月以降消費分野で心配なデータがでているわけだ。これは、株価の乱高下や政治不信がもたらす、短期間の動きだけの可能性もあり、米経済の成長率停滞を強く示唆しているとまでは言えない。ただ、先進国の株式市場において、9月半ばのFOMC後の高値を超えて上昇するには、米国消費の堅調な回復を示す材料が欲しい。今焦る必要はないと考える。

現段階で、米国・日本など先進国株より、投資対象として魅力的なのは、2013年春先まで経済停滞をうけて、通貨危機まで懸念され売られていた新興国株だろう。中国やブラジルの株価が反転したのは7月で、それを後追いする格好で、売られていた通貨も9月初旬から反転している(グラフ参照)。


新興国経済はなお心許ないが、今は、最悪期を脱したばかりのフェーズにある。このため、「経済の安定が続いている」or「悪くない経済状況」という材料だけで、今の株高・通貨高が持続する余地がある。また、中国など一部の株式指数は、予想PERなどバリュエーションの観点からも、先進国株より投資妙味がある。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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