電力システムの改革は
アベノミクスの重要課題

前回詳しく述べたように、アベノミクスの三本目の矢は「民間投資を喚起する成長戦略」である。いかに民間投資を引き出すかというディマンドサイドが重要である。ただ、そうした需要を引き出すためには、サプライサイドの改革、すなわち成長戦略が必要だ。

 日本が取り組もうとしている電力システム改革は、アベノミクスの成長戦略のなかでもとりわけ重要な位置を占めるものと期待される。電力分野の投資規模は巨大であり、その投資が経済に及ぼす効果も大きいからだ。

 電力システム改革の基本を理解するためには、日本が電力システムをどのような方向に持っていくべきかを議論する必要がある。サプライサイドの体系として見たとき、電力システムがどう変化していくのが好ましいのかということである。その点が明らかになれば、民間投資を喚起するはずだ。それがディマンドサイドから見た電力システム改革の狙いでもある。

 日本の電力システムのあるべき姿は、福島の原発事故を契機に大きく転換することを余儀なくされた。それまでは、当面、電力供給の原発への依存度を50%程度にまで高め、いずれ太陽光や風力などの再生可能エネルギーの技術が進んできたらそちらに切り替えていく──というのが日本の電力システムの方向性であった。

 1970年代の2度の石油ショックでは、化石燃料に過度に頼ることのリスクが明らかになった。そこで原子力発電への依存度を高める動きが出てきたのである。また、温暖化ガスの発生を抑制するという意味でも、原発は優れた発電手法であると考えられてきた。

 福島の原発事故は、そうした流れに大きな修正を迫るものであった。原発への依存度は下げていかねばならない。とはいえ再生可能エネルギーの技術革新が急速に進むというものでもない。そこで、火力発電をうまく使いながら、再生可能エネルギーの技術進歩を待つ──そうした方向に流れが変わりつつある。