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ドバイショック後の“小康状態”は続かず?
円高を抑制できない為替メカニズムの現実

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第104回】 2009年12月8日
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 足許の為替市場では、“ドバイショック”が小康状態を保っていることもあり、「ドル安・円急上昇」の動きはやや後退している。

 ドル安一服感の背景には、円急上昇の反動や、年末にかけての金融市場の機能低下の懸念がある。年末や年度末が近づくと、通常ドル資金の貸し手が減少する傾向がある。

 ドルを貸す人が減ってしまうと、大手金融機関などは自前でドル資金の調達をせざるを得なくなる。そうなると、手持ちの自国通貨を売って、ドルを買う動きが鮮明化する。

 その結果、為替市場でドル需要が拡大するため、短期的にはドル買いが優勢になる。当面、ドルの買いが入り易く、円高・ドル安傾向が一服するとの見方が有力だ。

 しかし、これでドル安・円高の動きが終わったと見るのは尚早だ。米国経済は、依然バブルの後始末に苦しんでおり、短期間に景気が大きく盛り上ることは考え難い。

 景気の本格回復が遅れると、中期的なドルの上昇余地は限られる。一方、新興国の経済発展のスピードは加速しており、新興国の通貨はいずれも、対ドルで強含みの傾向を示している。それに引っ張られる格好で、資源国通貨も強含んでいる。こうしたトレンドは、すぐに変化することはないだろう。

 また、米国の政策当局は、国内経済を回復させるために、ある程度のドル安を容認して輸出を拡大することを意図している。それは、政府高官の発言などから読み取れる。

 現在、ヘッジファンドや米国の大手機関投資家の多くは、金利水準の低いドル資金を調達して、その資金をブラジル・レアルなどの高金利通貨で運用している。いわゆる“ドルキャリートレード”だ。それによって、金利差や為替差益を享受している。

 彼らにとって、ドルが下落する方が、より高い収益を上げるチャンスが増える。そのため、ドル安傾向は好都合だ。

 そうした要素を考えると、中期的なトレンドとして、ドル安・円高傾向に大きな変化はないだろう。年明け以降、円高が一段と進む可能性は高いと見るべきだ。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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