株式レポート
10月18日 18時0分
マネックス証券

混乱が一段落した後に考えること〜アベノミクスの様変わり〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

来週の重要経済指標、主要企業決算についてPDF版のレポートで解説しています


今週、米国の債務上限問題を巡る混乱もとりあえず落ち着き、米国市場では17日(木)S&P500が再び高値を更新している。一連の政治ショーを冷静に見定めて、相場急落のタイミングをとらえてリスクテイクをできた投資家が投資リターンを高めることに成功したということだろう。

一方で、この米国政治発の混乱に起因する目先の思惑でマーケットは揺れ動いてきた。このため、経済状況などファンダメンタルズと異なる値動きが、マーケットで起きている可能性がある。17日に、米国株は底堅く高値を更新する格好で上昇したが、一方で米国金利が大きく低下、為替市場でドル安、原油など商品市況は調整している(グラフ参照)。


10月15日レポートで紹介したが、米国の債務上限問題は下値でリスクをテイクする材料と割り切った方が無難だろう。株高の持続をもたらすには、経済状況の一段の改善という別の材料が必要とみる。一方、米国の経済指標は夏場まで絶好調だったが、改善一服を示す指標が散見されている。そして債務上限問題一色だった今週、あまり注目されなかったが10月分の製造業や住宅業界の景況感指数は、いずれも9月から低下している。

FRBによるQE3縮小が先送りされる公算が高まり、金融緩和により景気・株価を押し上げるという過去2,3年同様の年末にかけてのパターンも想定できる。ただ、米国では、政府機関閉鎖の悪影響もあり、足元で米国の景気指標に変調の兆しがみられる。来週から、米経済指標(9月分)発表が再開されるが、10月分の先行指標の動きを踏まえると、経済指標が市場予想を下回るリスクがある。今は、米国を中心に経済状況の方向を慎重に見定め、投資判断を行いたい局面である。

そして、目先の思惑から離れて、現在そして今後の経済状況への冷静な視点が重要になっているのは、日本のマーケットでも同様である。

思い出して頂きたいのは、2012年11月半ばからの、歴史的な株高と超円高の修正は、経済正常化と脱デフレを最優先に掲げるアベノミクス発動で実現したことだ。その成功で、2013年前半の日本経済の高成長、デフレ圧力緩和や失業率改善が実現し、今なお実体経済の回復は続いている。「脱デフレに向けた経済政策のパラダイムシフト」であるアベノミクスについて、批判や雑音を含めていろいろな見方があったが、当初から高く評価していた筆者にとっては、ほぼ想定していた通りのことがこれまで起きた。

ただ、経済正常化と脱デフレを最優先課題に掲げ、金融・財政政策ともにアクセル全開だったアベノミクスは、消費増税を含めた大規模な緊縮政策というブレーキが踏まれるなど、変わりつつある。一方で、財政政策の大きな変更が、脱デフレの途上にある日本経済に対して及ぼす影響(10月4日レポート参照)を懸念する見方は、メディアなどではあまり見かけない。

第1の矢(金融緩和強化)を軸に、日本経済の病巣であるデフレの克服に本当に動き出したから、アベノミクスはマーケットと経済の景色を変えた。ただ、現在のインフレ率や失業率の水準などを踏まえると、デフレ圧力は和らいでいるが、圧倒的に「総需要が総供給を下回る」状況は依然続いているとみられる。

総需要と総供給が時間とともに、どのように動くのかについて、イメージ図を作成した。この筆者の見方が妥当なら、なお日本経済にとって必要なのは、消費や民間企業の投資(総需要)を増やすことだ。そして総需要の変動によって、経済成長率や企業業績そして株価の方向がほぼ規定される。


実際には、消費増税という「財政政策の転換」で総需要の抑制を始め、その一方で「第3の矢」である成長戦略を軸とした経済政策運営に変わりつつある。「成長戦略」とは名前の響きは良いが、これに伴う具体策をみると首をかしげたくなるメニューが多い。仮に、メニューが妥当なものだけが実現しても、その多くのメニューは総需要ではなく、総供給をゆっくりと底上げするだけである。

先のイメージ図が示すように、現状は総需要の回復が始まったばかりで、依然「総需要<総供給」という大きな「マイナスの需給ギャップ」が深刻なままである。望ましい成長戦略が仮に実現しても、それは、他国のように+2%前後のインフレが実現する正常な経済状況となり、総需要と総供給の均衡が概ね保たれる(マイナスの需給ギャップがなくなる)状況に近づいて初めて、経済を押し上げる効果が現れる。その状況に至るには、まだ更なる総需要の回復と時間が必要なのである。

言い換えると、「第1の矢」が脱デフレの起爆剤となり、「第2の矢」が需要回復をサポートし、脱デフレが実現する。その後にようやく「第3の矢」は効果を発揮するということである。

もちろん、規制緩和の実現などには時間がかかるので、「脱デフレ後」を見据えた政策に取り組んでいるという面はあるのかもしれない。しかし、日本経済は、依然、病巣であるデフレを克服する途上にある段階にある。こうした中で、「第2の矢」である財政政策において時期尚早に急ブレーキを踏み、脱デフレの動きが一旦止まる恐れがある。そうしたリスクがある中で、耳障りは良いが、今の経済状況で優先順位が高いわけではない、「成長戦略」に政策の軸が移ってしまった。アベノミクスが成功するか微妙になっている。

以上のように、最近の状況を残念に感じている筆者は、日本経済とマーケットそしてアベノミクスに対して、かつてのように楽観的ではない。少なくとも、来年にかけて脱デフレの動きが止まり、経済状況やマーケットは、米国を中心とした海外経済次第で大きく変わる状況に逆戻りすると予想している。2013年前半までと全く異なる今後の経済状況を想定して、冷静な投資判断をお勧めしたい。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

■ご留意いただきたい事項
マネックス証券(以下当社)は、本レポートの内容につきその正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。当社が有価証券の価格の上昇又は下落について断定的判断を提供することはありません。
本レポートに掲載される内容は、コメント執筆時における筆者の見解・予測であり、当社の意見や予測をあらわすものではありません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。
当画面でご案内している内容は、当社でお取扱している商品・サービス等に関連する場合がありますが、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。
当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。当社でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動・金利の変動・為替の変動等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
なお、各商品毎の手数料等およびリスクなどの重要事項については、マネックス証券のウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」(※)をよくお読みいただき、銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で行ってください。
((※)https://info.monex.co.jp/policy/risk/index.html)

■利益相反に関する開示事項
当社は、契約に基づき、オリジナルレポートの提供を継続的に行うことに対する対価を契約先金融機関より包括的に得ておりますが、本レポートに対して個別に対価を得ているものではありません。レポート対象企業の選定は当社が独自の判断に基づき行っているものであり、契約先金融機関を含む第三者からの指定は一切受けておりません。レポート執筆者、並びに当社と本レポートの対象会社との間には、利益相反の関係はありません。

(マネックス証券)


マネックス証券
株式売買手数料(指値) 口座開設
10万円 30万円 50万円
100円 250円 450円
【マネックス証券のメリット】
日本株投資に役立つ「決算&業績予想」、信用取引ではリスク管理に役立つ信用取引自動決済発注サービス「みまもるくん」が便利。米国株は最低手数料5ドル(税抜)からお手軽に投資が可能で、米国ETFを通じて世界中に分散投資できる。投資先の調査、リスク管理、リスク分散など、じっくり腰をすえた大人の投資ができる証券会社と言えるだろう。一方、短期・中期のトレードに役立つツールもそろっている。逆指値ほか多彩な注文方法が利用できる上に、板発注が可能な高機能無料ツール「新マネックストレーダー」が進化中だ。日本株、米国株、先物取引についてロボットの投資判断を日々配信する「マネックスシグナル」も提供しており、スイングトレードに役立つ。
【関連記事】
◆AKB48の4人が株式投資とNISAにチャレンジ!「株」&「投資信託」で資産倍増を目指せ!~第1回 証券会社を選ぼう~
◆マネックス証券おすすめのポイントはココだ!~日本株手数料の低さ、ユニークな投資ツールが充実しているネット証券大手
マネックス証券の口座開設はこちら!

 

株主優待名人の桐谷さんお墨付きのネット証券!最新情報はコチラ!
ネット証券口座人気ランキングはコチラ!
NISA口座を徹底比較!はコチラ
株主優待おすすめ情報はコチラ!
優待名人・桐谷さんの株主優待情報はコチラ!

 

Special topics pr

ZAiオンラインPickUP
[クレジットカード・オブ・ザ・イヤー2017]2人の専門家が最優秀クレジットカードを決定! 2017年版、クレジットカードのおすすめはコレ! おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き その 【株主優待】最新の株主優待情報更新中! アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードは、 本当は“ゴールド”ではなく“プラチナ”だった!? 日本初のゴールドカードの最高水準の付帯特典とは?
ランキング
1カ月
1週間
24時間
じぶん銀行住宅ローン 「アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」付帯サービスはプラチナカード顔負け!最強ゴールドカード 実力を徹底検証 アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!


 

10月号8月21日発売
定価730円(税込)
◆購入はコチラ!

Amazonで「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!


【最強「株」ランキング&ふるさと納税・秋冬版】
速報! 上方修正必至好スタート株13
・3年で2倍を狙う「儲かる株」ランキング!
成長+割安+配当の「3拍子揃った最強株25」
[17-18年秋冬版]ふるさと納税 大カタログ
・禁断の ふるさと納税「還元率」ランキング
株で1億円作る とっておきのマル秘ワザ
美人主婦のコツコツ「デイトレ」術!
・毎月分配型投信「本当の利回り」激辛診断!
・アナタの危険度は?「老後貧乏」から脱出!
利回り6%超も! 直近3カ月の「新設優待株」
・まだ買える? 高値更新中の米国株をチェック
・勝谷誠彦の「兵庫県知事選挙・散財記」

「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!

>>「最新号蔵出し記事」はこちら!

>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

Apple Pay対応のクレジットカードで選ぶ! Apple Payに登録して得する高還元率カードはコレ! 堀江貴文や橘玲など人気の著者のメルマガ配信開始! クレジットカードに関するクチコミ情報大募集中!