この原稿は、宮古島で書き上げたものだ。宿泊先の東急リゾートホテルの窓から見下ろすと、東洋一と言われる美しい砂浜の与那覇前浜ビーチが続く。紺碧の海から打ち寄せてくる緩やかな白い波、海の匂いを届けてくる早朝の爽やかな潮騒……、ホテルのベランダでコーヒーを飲みながら、飽きることなく朝の宮古島の景色に見とれていた。

 その前日まで沖縄名護市で「沖縄・中国映画週間」のために送っていたあの数日間の忙しさが、まるで嘘のようだった。

前半は台本の通りの展開

 沖縄会場では、映画上映以外に、「“映画と観光”日中合作映画シンポジウム」も同時開催された。日中映画関係者、観光経済の行政担当者などをお呼びして、日中合作映画製作実現と沖縄観光のさらなる発展に向けて、活発な意見交換が行われた。私はそのシンポジウムのモデレーターを務めた。

 自画自賛に聞こえるかもしれないが、そのシンポジウムは大勢の人から評価された。シンポジウムの席上で、中国の監督たちが社交辞令よりも映画製作現場の実感に伴う意見や提案を率直に伝え、日本の観光経済行政を担当する観光庁、沖縄文化観光スポーツ部側の関係者が真摯にその意見を受け止める。その姿勢と態度に、シンポジウム参加者たちが好感を覚え、シンポジウムの好評と繋がったのではないか、と私は思う。

 今度のシンポジウムにパネリストとして参加した何平監督は中国映画監督協会の理事長でもあるベテランの映画監督だ。もう一人は今年、中国で最も人気を博した映画「北京遇上西雅図」(邦訳:北京ロマンinシアトル)を作った薛暁路監督である。

 シンポジウムの最初の進行構成は、私による「映画と日本の地域観光の現状と事例」の説明、観光庁・篠原康弘審議官によるスクリーンツーリズム関連の成功例と観光促進効果関連の発言、中国国家観光局東京首席代表による中国観光と映画との関係についての紹介といった内容からなっていた。そこまでは基本的に事前に綿密に打ち合わせを経て用意された台本の通りの運びだった。