1990年代の大蔵・通産官僚の不祥事頻発を彷彿させるような、キャリア官僚の逮捕が相次いでいる。かつては官僚のたかり体質が原因だったが、今回はもはや確信犯的犯罪としか言いようがない。官僚のモラル(倫理)とモラール(士気)の低下が原因だが、政治は解決策を打ち出せず、国力の衰退は必至だ。

 今月4日、警視庁捜査二課は前文部科学省文教施設企画部長、大島寛容疑者を収賄容疑で逮捕。容疑は部長在職中に国立大学法人などの施設整備に関する情報を提供し、見返りに少なくとも200万円の現金を受け取ったというもの。

 文教施設企画部長は旧文部省の技官の就く最高ポストだ。文科省に与えた衝撃は、リクルート事件での高石邦男事務次官逮捕(1989年)に匹敵するものだった。

 大島容疑者逮捕の1ヵ月半前の2月23日には、大阪地検特捜部が国土交通省キャリア技官の本省企画専門官を競売入札妨害容疑で逮捕している。前任の国営飛鳥歴史公園事務所長時代に、発注工事の入札予定価格を業者に漏らし100万円を受領した容疑である。

 国交省は昨年3月、公正取引委員会から、河川やダムの水門工事で、省ナンバーツーの技監経験者などの大物OB5人の談合への関与があったと指摘され、談合防止罪の適用を受け、改善措置を求められたばかりだった。

 不祥事はキャリアばかりではない。昨年10月25日には、財務省ノンキャリアの主計局係長と同事務官の2人が集団強姦容疑で警視庁に逮捕されるという事件まで起きている。「ノーパンシャブシャブ接待」の“古傷”を持つ同省のキャリア官僚たちも、ただ唖然とするばかりだった。

かつてのたかり行為が今は確信犯的犯罪へ

 昨年11月、防衛事務次官在任が4年以上にわたった守屋武昌前次官逮捕で衝撃が走った霞が関だが、これ以降も不祥事が相次いで発覚し、泥沼に落ち込んだかのような深刻な事態になっている。

 それはあたかも、90年代後半から相次いだ官僚不祥事を再現しているかの錯覚すら覚える。

 時計の針を90年代半ばに戻そう。95年、旧大蔵省(現財務省)の事務次官の有力候補だった元主計局次長と東京税関長の2人が過剰接待、金銭疑惑などで辞職。96年、岡光序治前厚生事務次官が社会福祉法人代表からの収賄容疑で逮捕(その後、有罪判決を受け服役)。同年、旧通商産業省(現経済産業省)は、泉井事件の被告の石油商から巨額の接待を受けたとして多数の幹部を処分。97年、関西空港汚職事件で元運輸事務次官逮捕。98年には大蔵省金融検査部汚職事件、同省過剰接待事件、防衛庁調達本部巨額背任事件などが起きている――。