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レース用の車イスまで開発する
ホンダの総合モビリティー戦略

週刊ダイヤモンド編集部
2008年11月5日
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ホンダが開発したレース用車イス

 大きなスクリーン上に映し出されたコンピュータ画面では、なにやら部品が次々に組み合わされ、みるみるカタチが出来上がっていく。一見、スポーツカーのように見えるが、そうではない。車イスマラソンに使用されるレース用車イスだ。

 これは10月下旬、千葉・幕張メッセで開催された第30回全国障害者技能競技大会「障害者ワークフェア 2008」でのデモンストレーション競技でのワンシーン。全国障害者技能競技大会(アビリンピック)は、障害のある人が職業技能を競い合う、いわば身障者のための"技能五輪"だ。

 この場で、冒頭のようなコンピュータを使ったレース用車イスのモデリング(設計開発)を実演したのが、自らも車イスに座ったホンダ系企業(ホンダR&D太陽)の技術者らだ。

 ご存じの通り、ホンダの製品といえば、自動車やオートバイだけではない。最近はソーラーパネルや小型ジェット機までもつくる会社としても知られているが、二足歩行ロボット「アシモ」をはじめ、"商売抜き"でも将来の技術力向上のために日夜、開発に取り組んでいる製品があるのだ。

 非常に地味ながらも、その一つがレース用車イスだ。この車イスを開発・製造している企業は、ホンダR&D太陽やホンダ太陽。ホンダR&D太陽は本田技術研究所の、ホンダ太陽は本田技研工業の特例子会社。ホンダ創業者、本田宗一郎が「ホンダもこういう仕事をしなきゃダメなんだ」という考えのもと、身障者の"社会的自立の促進"のために設立された。

 レース用車イスの開発は、もともと本田技術研究所が担当していた。「5年前からホンダR&D太陽も開発を始め、2年前からは自立してホンダR&D太陽が自前で開発している」(樋口克己ホンダ太陽・ホンダR&D太陽取締役管理本部長)。

 そもそもホンダは、福井威夫社長によれば、「あらゆる移動手段や環境技術を網羅する総合モビリティーを目指している会社」。じつは、介護・福祉分野では、アシモの基礎技術を応用し、高齢者など足腰の弱った人でもスタスタ歩けるように支援するロボットスーツ「歩行アシスト」も開発している。

 年々、高齢化や身障者の社会進出が高まるなか、ホンダには「将来的に、介護・福祉分野は重要な分野になる」との認識がある。ゆくゆくはホンダ太陽やホンダR&D太陽からホンダへの技術やノウハウのフィードバックも期待されるところだ。

 開発したレース用車イスも、すでに構成部品などで複数の特許を出願したほか、競技では2005年の「大分国際車イスマラソン」 でハーフ3連覇を達成するなど、徐々に成果が表れ始めているという。
 
(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)

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