7月24日の日本時間午前6時、ニュージーランドは0.25%の利下げを発表、政策金利を8.25%から8%とした。これを受けて、ニュージーランド(NZ)ドルは対米ドルで0.75ドルから0.74ドルへ、対円で81円から80円へと急落。しかし、日本では「80円に近づいたところで、すさまじい勢いで買いが入った」(市場関係者)という。

 5年ぶりとなる利下げに踏み切ったのは、景気後退懸念があらわとなったからだ。雇用、設備投資、住宅建設件数などの各種指標は顕著に悪化し、信用リスクも高まっている。2009年3月までの経済成長率見通しは、1%に下方修正された。

 そもそも同国は慢性的に経常赤字で、経済の脆弱性が否めない。資源国のオーストラリアと関係が深く、また自身も農畜産物の輸出国であることが投資家人気の一因だが、資源国通貨としては格が不足だ。強過ぎる通貨と高過ぎる金利は経済にも悪影響を及ぼしており、年内にさらに2度ほどの利下げを断行する可能性が高い。

 これだけの材料が揃っているにもかかわらず、NZドルは依然、高値圏にある。海外勢のファンドなどは売り圧力をかけているのだが、「“金利が高くて押し目なら買う”という行動しか取らない日本の個人投資家が、買い支える構図」(田中泰輔・リーマン・ブラザーズ証券チーフ外国為替ストラテジスト)にあるためだ。

 NZドル証拠金取引(FX)のネットポジションは、この半年で4~5倍にもふくらんだ。NZドル建て債券も、日本の個人投資家への販売額が同国の経常赤字比80%以上にまで達しており、06年には、来日したカレン副首相兼財務相が、市場関係者に“リスク”を説明するに至っている。

 過去にも、NZドルは当局の介入などで大幅な調整を繰り返してきた。投資家の過剰な信頼が崩れたときには、調整の域を超えた暴落ともなりかねない。

 「3月の下落時の1NZドル76~77円が一つの床。個人投資家もショックに慣れてきてはいるが、これを抜けると動揺が広がる可能性がある」(岡安盛男・マネックスFXマーケティング部チーフアナリスト)。

 リーマン・ブラザーズの予測では、今年第3四半期で1NZドル66円、来年第1四半期では60円。田中チーフストラテジストは、「数年前までNZドルはまともな投資対象ではなかったことに注意すべきだ」と警告する。投資家は、“嵐”に備えておく必要がありそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 河野拓郎)