ということは、業者が偽装納入をし、阪急阪神ホテルズの厨房スタッフは、誰もが業者に騙されていたのだ。であれば、阪急阪神ホテルズこそ被害者ではないか。だが、阪急阪神ホテルズでは、その業者を訴えるつもりはないらしい。何故なんでしょう。

 朝日新聞の記者さんが、大阪市内の水産業者に取材を試みています。

「キャビアとトビコ(とびうおの卵)では、粒の大きさがぜんぜん違い、料理人がこの二つを見間違えるわけがない」

 業者さんはこんなふうに取材に応えています。

 私も、ずっと疑問に思っていたのだ。たとえば、冒頭で例を挙げたように、客が『若鶏の照り焼き 九条ネギのロティとともに』を注文したとする。すると、ホール担当者は厨房に行き、

「若鶏の照り焼き 九条ネギのロティ、オーダー入りました」と伝えるはずだ。

 厨房からも、あいよー、若鶏の照り焼き 九条ネギのロティ一丁! と復唱すると思うのである。こんな俗っぽい言い方をするかどうかはわかりませんが。

 ホテルのレストランの厨房を任された料理人が、オーダーには“九条ネギ”とあるのに、使うのがフツーの白ネギだったらおかしいと思わないのだろうか。一流ホテルの料理人が、レッドキャビアとトビコの違いもわからないのだろうか。

 冷凍庫から取り出して解凍した魚なのに、これを“魚市場直送”とか“鮮魚”と銘打ってサーブすることに、一流ホテルの料理人たちは誰ひとり首を傾げなかったのだろうか。

 芝エビとバナメイエビ(小ぶりのエビ)の違いがわからなくても、阪急阪神ホテルズでは料理人として採用されるのだろうか――?

 というのが私の疑問だ。二三店舗もあるレストランで、七年半ものあいだ、誰も気づかないなんてのはおかしい。スタッフは全部で何人いるのだ?

 メニュー表示は偽装ではなく“誤表示”と言い張る出崎社長の説明はたいへんわかりにくく、記者さんらとの質疑応答はまったくと言っていいほどに噛みあわなかった。

 なものだから、記者さんたちは激しくツッコみ、返答に窮した阪急阪神ホテルズでは、偽装の疑いが強い六品目について再調査し、改めて記者会見を開くということでその日は収まった。