乳業3位の雪印乳業と同4位で「メグミルク」ブランドを擁する日本ミルクコミュニティ(日本MC)は今年10月1日付で経営統合すると発表した。

 経営統合で誕生する持ち株会社、雪印メグミルクの連結売上高は約5063億円(2008年3月期の単純合算)となり、食品業界(JTを除く)で売上高12位、乳業2位の森永乳業の5868億円に迫る規模となる。

 かつて、売上高1兆1600億円強を誇り、乳業最大手だった雪印乳業だが、2000年の集団食中毒事件、02年の牛肉偽装事件で、経営危機に陥った。雪印は牛乳事業を切り離し、全国農業協同組合連合会(全農)や全国酪農業協同組合連合会(全酪連)の乳業事業と統合して日本MCが設立された経緯がある。

 今回の経営統合は雪印が総合乳業メーカーへの回帰を目指すものだ。しかし、雪印は低温物流やアイスクリーム、食肉などの事業の切り売りや廃業をしたため、再統合してもかつての規模の半分でしかない。

 雪印から乳業最大手の座を奪った明治乳業は今年4月に明治製菓と経営統合して、売上高1兆1000億円と、かつての雪印に匹敵する売上高になる。しかも、海外事業をはじめ、積極的なM&Aを展開すると宣言しており、業種を超えた業界再編もありうる状況だ。

 これに背を押されるかたちで、森永乳業と、菓子4位の森永製菓も経営統合に動くとの観測もあり、これが実現すれば、食品業界9位、売上高7500億円のメーカー誕生となる。

 大手3社が乳業業界に君臨する構造は変わらないが、かつて最強だった雪印の“凋落”ぶりは明らかだ。

 また、今回の経営統合は、少子高齢化などにより牛乳の売り上げが低迷し、また規模縮小による原料調達力が低下したためで、いわば追い込まれての経営施策という側面もある。乳業の上位2社とは、明らかにスタンスが異なる。

 低収益の乳業の統合だけでは、雪印にとっては、利益率が低下するだけに終わってしまう。流通に対する価格交渉力の強化や、原料調達力の向上はあるにせよ、当面はリストラ効果を目指す後ろ向きの統合でしかない。

 今後、中小の乳業メーカーのM&Aに乗り出す可能性もあるが、それでは上位2社の背中は遠いままだ。

 それゆえ、今後考えられるのは、乳業の壁を越えた異業種のM&Aに乗り出すしかない。今回の統合で、雪印に10.3%、日本MCに40%出資する筆頭株主である全農の影響力がさらに強まるのは確実だ。両社の株主には農林中央金庫も控えており、これらを後ろ楯に、食品メーカーのM&Aに乗り出すなら、食品業界で進む再編はさらに加速するだろう。

 復権を目指すM&Aに雪印は動くのか。経営統合の焦点はそこにある。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  小出康成)