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今週のキーワード 真壁昭夫

世に言う政治的野心か、純然たる憂国の情か?
幕を開けた「小泉“脱原発”劇場」の効用を考える

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第300回】 2013年11月5日
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“脱原発”を唱えて再び表舞台に
小泉元首相の言動に分かれる評価

 最近、小泉元首相が“脱原発”を訴えて活発に活動を行っている。講演会で“脱原発”を訴えたり、社民党など原発に反対する野党の党首とも会談を行ったりと、その行動は人々の関心を引き始めている。

 そうした小泉氏の行動に対して、「もともと同氏が首相だったときには原発推進派だったはずで、今さら“脱原発”を訴えるのはおかしい」「“脱原発”の主張の背景には政治的な野心がある」「息子である小泉進次郎氏に対する長期的な支援だ」といった、様々な批判がある。

 そうした批判の声の一方で、「核の本格的なごみ処理施設を持たないわが国が、これからも原発を推進することには大きなリスクがある」という主張には、それなりの説得力がある。

 また何よりも、3年前の東日本大震災によって、福島原発で大事故が発生した生々しい記憶が人々の意識の中に鮮明に残っている。小泉首相が提唱する“脱原発”に賛同する人たちも増えているようだ。

 しかし、わが国のように大きな経済規模があり、しかもエネルギー資源を海外からの輸入に依存しているケースでは、エネルギー政策が持つ意味はとても大きい。そのエネルギー政策を、短期的に原発の危険性だけに囚われて判断することは必ずしも適切ではない。

 安倍首相は、エネルギー政策は国益の観点から総合的に判断すべき問題として、小泉首相の発言に反対のスタンスを取っている。重要なポイントは、エネルギーに関する短期的、中長期的な見方を明確に区別して、火力・原子力などのエネルギー供給の組み合わせ(エネルギーミックス)を見つけ出すことだ。

 小泉元首相の“脱原発”の問題提起については、「政治的野心がある」などの批判があるのは理解する。しかし、その主張自体はまっとうな議論であり、十分に傾聴に値すると考える。小泉首相の問題提起をきっかけに、国民全体でわが国のエネルギー政策を考えてみるよい機会だ。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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