つい先日、思わずメモをしてしまった肉食男子の名言があった。

「食物繊維は肉でとる!!」

「…それって、ただの筋だよね?食物繊維ではないよね?」とおもわず笑ってしまった。確かに、筋っぽい肉を食べれば、なんだか食物繊維がとれたような気になるのもわからないでもない。けれど…食品成分表を開いてみても肉類の食物繊維の欄にはやはり「0」ばかりが並んでいる。

 もちろん、こんなふうに認識している人は少ないとしても、「食物繊維が豊富な食品は?」と聞かれたらどうこたえるだろう。また、食物繊維が不足すると便秘になるのはよく知られているが、それがやがて「痔」という症状まで引き起こすことを認識している人はどれくらいいるだろうか。

 この連載をよく読んでくださっている方にはもうお馴染みの、という感じだが、食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があり、それぞれ働きが異なっている。「食物繊維は肉でとる!」ではないが、繊維というと筋状のものを想像してしまいがち。しかし、ネバネバなもの、水に溶けるタイプのものまで、いろいろある。

 たとえば、こんにゃくに代表されるグルコマンナン、こんぶやわかめなどの海藻類に多いアルギン酸、果物に多いペクチンなどの食物繊維は水溶性食物繊維で、高脂血症・高血圧の予防、血糖の上昇を抑制、発ガンのリスクの軽減、などの働きがあげられる。一方、不溶性の食物繊維には豆類や穀類のセルロース、穀類のふすまなどにあるリグニン、ごぼうなどのイヌリン、カニやエビの殻のキチンなどがあり、便秘や大腸がんの予防、有害物質の排泄作用、あごの強化、虫歯の予防、などの働きがある。

 便秘のときには食物繊維を、と一言でいっても、食物繊維が含まれるものならなんでも良いというのではなく、不足しているものを補うことが大事である。一般的に、食物繊維は意識していないと不足しがちだ。「日本人の食事摂取基準」(2010年版)では、今後5年間の成人の食物繊維目標量を男性1日19g、女性は1日17g以上としている。きちんと形と量がある排便が定期的にない場合には、体はもっと必要としていると考えて良いだろう。