2012年、交通事故死亡者数は4411人。12年連続で減少しているものの、毎年これだけの方が亡くなっているのだ。それに関連する法律トラブルも多い(参考記事はこちら)。不幸にも事故にあった場合、加害者から賠償金を得ることになる。被害者からすれば、お金で解決できるようなものではないだろう。しかし、せめてもの補償として、得られるものは得ておきたい。そこで頼りになるのが保険だ。しかし、場合によっては加害者が保険に加入していないこともある。そのときは、被害者は金銭的補償も受けられず、泣き寝入りしなければならないのだろうか。今回は、得られるものをしっかり得るための保険と法律の知識をお伝えする。(弁護士・谷原誠、協力・弁護士ドットコム

息子が交通事故で死亡
でも賠償金はもらえない?

 先日、沈痛な面持ちをした初老の夫婦が相談に来た。

「実は、先日、交通事故で息子を亡くしました。息子がバイクで交差点を青信号で通過しようとしたところ、加害者の車が信号無視で横から突っ込んできたのです。即死でした。葬儀も四十九日も終わったので、賠償金の話をしようとしたら、どうやら加害者は、任意保険に入っていないということです。そのうえ、経済的には余裕がなさそうです。私たちは、本当ならお金なんかいらない。息子に帰って来てほしいのです。でも、それは無理な話ですので、せめて正当な賠償金はいただきたいと思います。加害者にお金がないから何もなし、というのはやりきれません。どうしたら良いでしょうか……」

 私の法律事務所では、年間に1000件を超える交通事故の相談が寄せられる。たまにこのような加害者が任意保険に加入していないケースの相談を受ける。

「賠償金は、加害者の保険会社が払ってくれる」

 私たちは、そう思っている。しかし、加害者が任意保険に加入していなかったら、どうなるのだろうか?