「ネスカフェ アンバサダー」というもう1つの戦略

 実は、外で消費されるコーヒーはカフェだけではない。それは、オフィスである。

 かつては、オフィスでコーヒーを飲みたいと思えば、会社が買ってくれていた。しかし、バブルがはじけて経費削減が命題となると、オフィスで無料のコーヒーが飲めなくなった会社が増えているという。出社途中のコンビニや、途中にある自動販売機でコーヒーを買って、オフィスに持ち込む時代へと変わっているのである。

 そこで、次に取り組んだのは「ネスカフェ アンバサダー」だ。

 アンバサダー(大使)に応募した方は「ネスカフェ」のコーヒーマシンをオフィスで、それも無料で使用できる。そのうえで、アンバサダーはコーヒーの代金をオフィスで集め、「ネスカフェ」を通販で購入していただく。一方、ネスレ日本は、コーヒーの売上で利益を得るという仕組みだ。これは善意の集金が成り立つ日本独自のシステムだと言える。

 これも「ネスカフェ システム インサイド」の1つのビジネス・モデルである。

 1年近くやってきて、現在のところ応募が10万人を超えた。1つのコーヒーマシンを10人が使用していると考えると、1日で約100万人が「ネスカフェ」を飲んでいる計算になる。これによって、これまで家の中で飲むとされていた「ネスカフェ」がオフィスに入ることになった。

「挽き豆包み製法」という技術革新と「ネスカフェ アンバサダー」というシステムの構築。この2つの戦略によって、「ネスカフェ」は家で飲まれるブランドから、外でも飲まれるブランドへと生まれ変わったのである。