問題なのは、どんな対応策を講じるにしても、残された時間はあと半年もないということだ。対応に割ける時間も限られる。その中で効果的な対応策を優先的に実施していくことが必要になる。しかも、この半年間は、年末調整、確定申告、そして3月末の決算期のピークなど、中小企業にとって避けて通れない重要なイベントが目白押し。それも考慮して今から対策を講じていくのがポイントだ。

確実に増加する負担を
体質強化につなげる

図2 新・消費税施行までにやるべき8のこと
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 中堅中小企業向けの財務会計ソフトを開発・販売し、消費税率引き上げ対応策の相談も多い弥生のマーケティング本部スモールビジネス支援部マネジャーの塩﨑智史氏は「まず、『引き上げによってどの部分に影響が出るのか』という棚卸しをするのがよいでしょう」と語る(図2)。

 業種によって影響が出てくる部分は違う。小売店や飲食店など消費者向けのビジネスであれば、商品の値札、メニューの料金表示などが変わってくる。企業間取引のビジネスでは、見積書や請求書の出し方が変わる。個別の契約書の見直しも必要になる。「契約金額が税込表示であれば、先方への確認も事前にしておきたいですね」と塩﨑氏。

 納税金額も変わってくるので、納税資金をどう用意するのかも考えておくべきだろう。塩﨑氏は「納税のための引き出しであれば利息にかかる源泉所得税が非課税扱いになる納税準備預金の活用なども考えてもよいでしょう」と、この機会に納税に対する準備体制を見直すことを勧める。単なる受け身の対応で終わらせないことで、企業体質の強化を図るのだ。

 また、注意したいのは、移行に当たっての経過措置だ。すべての取引に認められるものではないが、一部の取引では2014年4月1日以降でも5%の消費税率が適用される。例えば、今年の10月1日を基準として、それ以前に契約して引き渡しが2014年4月1日以降になるものは、5%の消費税率が適用される。請負工事や予約販売などでは適用になるケースも多いだろう。また、3月31日までに購入して、4月1日以降に使用するものも5%。旅客運賃や電気料金などがこれに当たる。そのほか、年間で契約している保守や運用なども考えると、ある期間、消費税5%のものと8%のものが混在することになる。

「いつから何をどう変えるのか。それに伴う負担はどの程度あるのか。オーナーだけでなく、従業員の教育も含めて考慮するべきでしょう。いずれにしても、帳簿の中身が複雑になることは間違いありません。しかも、もう一度引き上げがある予定です。それを見越してどう対策を施すのか。国税庁のQ&Aを参照したり、税理士さんなど専門家に相談しながら進めていくことが必要です」(塩﨑氏)。