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田中均の「世界を見る眼」

各国の思惑が錯綜する「イラン核問題」の争点
安定的な国際秩序構築の試金石となる交渉の行方

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第26回】 2013年11月20日
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地域大国の地位確立を狙うイラン
核開発の意図と経済制裁緩和の目論み

 11月初旬、ジュネーブで行われていた核問題についてのイランと安保理常任理事国5ヵ国プラスドイツの交渉は、合意できずに終わった。また交渉が再開されると伝えられるが、交渉課題はイラン内でのウラン濃縮の進行を当面止める第一段階の合意をつくることであり、仮に合意ができても問題は続く。

 イランの核問題は、1つ間違えば中東を再び戦火にさらしてしまう極めて深刻な問題である。この問題の背景には複雑な各国の思惑が錯綜し、現在世界が抱えるいくつもの課題も見えてくる。

 まず、当事国であるイランであるが、多くの専門家は、イランはイスラエルに対する対抗力を持ち、地域の大国としての地位を確立するために、核兵器を保有する意図を有すると考えている。また、国際社会の努力にかかわらず、この意図を完全に放棄させることはできないのではないか、との見方も強い。

 イランは核不拡散条約のメンバーであり、核技術の平和利用の権利を主張し、ウラン濃縮技術を確立しつつある。しかし、いったん武器化に必要な程度のウラン濃縮が行われてしまえば、もはやイランの核兵器国化は止められない(したがってイスラエルは、空からの攻撃により核関連施設を取り除くことが、少なくとも当面はイランの意図を実現させない唯一の方法と考えているのであろう)。

 こうして関係国、特に米国の経済制裁を受け、国内物価の高騰に国民の不満が高まり、穏健派の大統領が選出されたイランでは、現在核開発の意図を持ったまま経済制裁の緩和を実現することが、政権に課せられた最大の課題となっている。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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