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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

消費増税で起こる市場の歪み
株価形成の過小評価リスク
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第117回】 2013年11月20日
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巷で言われる消費増税リスクは本当か?
わかり易いからアノマリーが起こり易い

 「来年は4月に消費税率の引き上げが待ち構えており、景気の勢いはそこから鈍化する。場合によっては景気後退があるかもしれない」

 消費増税は、誰にでもわかりやすいイベントなので、投資家、メディア、企業経営者、政治家など、それぞれがリスクを強く意識する。

 投資の考え方に沿って冷静に見つめると、こうしたわかりやすいイベントこそ、過剰反応の歪み(アノマリー)が起こりやすい状況だと認識すべきだろう。

 まず、簡単な事例から振り返ってみよう。2013年のダウ平均株価は、年間を通じてどのくらい上昇したかをご存知か(2012年末から2013年11月18日までの上昇率)。そして、その年間上昇率は2000年以降で何番目に高かったのか。

 答えは年間22%の上昇率で、2000年以降の14年間で2003年(25%)に次いで2番目に大きい上昇率である。こう言うと、きっと米量的緩和第三弾(QE3)が効いたからだろうと思うだろうが、それは正確ではない。

 日本の株価が今年5月を境に上昇力を失ったことは、周知の事実だろう。米国ではQE3の縮小観測が台頭した後も、年後半にかけて順調に株価は上昇した。昨年末の1万3104ドルが、このところ1万6000ドルに手が届きそうなところまで上がっている。

 昨年の今頃(11月)は、誰もが「米経済には財政の崖のリスクがある」と騒いでいた。歳出削減による景気下振れリスクによって、「○○%も経済成長率を押し下げる」という解説が乱れ飛んでいたのが、1年前のことであった。

 あれから1年が経過し、財政の崖は話し合いで緩和された部分もあったが、歳出削減が景気を下押した部分も小さくなかった。米議会のねじれは思った通り深刻で、債務上限問題は大きく揉め、10月には政府閉鎖が起こった。

 それでも、米経済は堅調に拡大して、株価は年後半にも加速した。財政要因で、民間経済の活動が制約されることは予想外に小さかったのである。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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