株式レポート
11月20日 18時0分
マネックス証券

高所恐怖症 - どこと比べるのか - 広木隆「ストラテジーレポート」

こどもの頃から高いところが好きだった。木登りは大の得意だった。猿も木から落ちる。得意であっても、よく落ちた。落ちて怪我ばかりしていた。骨折したのも一度や二度ではない。

ランチでもディナーでも、高層ビルにあるレストランから外の景色を観ながら食事するのが好きである。丸ビルのイタリアン『リストランテ・ヒロ・チェントロ』は味もさることながら眺望の良さが気に入っている。汐留のシティセンター41階にある『FISH BANK TOKYO』は夜景が見事だ。ライトアップされた東京タワーが目の前に見える。六本木・東京ミッドタウンにあるザ・リッツ・カールトン45階『ひのきざか』には、200年前の茶室を移築した「黒松庵」という部屋がある。床の間には軸が掛けられ花が活けてある。切られた炉には茶釜が吊ってある。そして45階の窓から外を眺めれば高層ビルが立ち並ぶ。200年前の茶室と高層ビルのコントラストが絶妙である。

僕はマンションの最上階に住んでいる。今の家に越す前のマンションでも最上階だった。自分より上に人がいるのが嫌なのだ。頭上で人の気配や物音がするのが気に障る。だから一番上に暮らしている。角部屋で3方向に窓がある。隣は巨大なショッピングモール。よって高い建物が隣接して建つことは当分ない。リビングから望む富士山の眺めをこの先、邪魔されることはない。満足である。

そんな高いところが好きな自分が、なんと高所恐怖症だったと分かった時には驚いた。自分でも信じられなかったが、そうなのである。数年前にスペインのバルセロナに行った時のことだ。有名なアントニオ・ガウディのサグラダ・ファミリアを訪れた。その塔の中に入って階段で上に登ることができるのだが、途中から足がすくんで動けなくなってしまったのである。理由は、窓ガラスがないことだと思う。どんなに高い高層ビルでも平気なのは、外界と部屋の中を区切る窓ガラスの存在が大きいのだとその時知った。サグラダ・ファミリアの塔の窓は、素朴な壁に単に穴がくり抜いてあるだけである。ぽっかりと空いたその窓から、恐る恐る外を見ると、なんと地上から高いところに自分がいるのだろうと、急にわが身の置き場に不安を感じた。落ちるわけはないのだけれど、どうにもこうにも、その「穴」に吸い込まれて落ちてしまいそうな怖さを感じた。これが高所恐怖症というものか。生まれて初めての経験であった。

ニューヨーク・ダウ平均が1万6000ドルの大台を一時つけ、日経平均は半年ぶりに1万5000円の大台を回復した。株価が高値圏に上昇すると、決まって警戒論が噴出する。今日、日経電子版の「マーケット」欄を見るとトップ記事の見出しに警鐘を鳴らすものが出ていた。

「外国人主導の株高に懸念 84年前と酷似する米国」
「日本株、ブラックマンデーとの類似説を探る」

少し前にはこういう記事もあった。
「株1万5000円台 気になる『5.23』前夜との類似」

暴落した時と似ている ? だから、また暴落が起きるかもしれない、警戒が必要だ ? そういう話なんだろうけど、読む気にもならなかった。だって、いつと比べているのだろう?84年前?ブラックマンデー?当時と今とでは全然状況が違うではないか。

比べるなら、せめて半年前、5月の「5.23ショック」との比較にしてもらいたいものだ。「株1万5000円台 気になる『5.23』前夜との類似」という記事は、NT倍率の上昇を指摘している。日経平均への寄与度が最大のファストリの値動きにも言及している。

「気掛かりなのは、日経平均が1143円安と急落した5月23日の直前である5月22日、NT倍率が12.24倍を付け、ファストリが特段の材料はないまま7%高となったことと、足元の状況が似通うことだ」と記事は述べている。

この記事が指摘していない、「5.23ショック」との類似点がもうひとつある。それは、日経平均が1万5000円の大台を回復した次の日に、僕がテレビ東京の『ニュースモーニングサテライト』に出演して株の解説をすることだ。前回、日経平均が1万5000円台を回復したのが、5月15日だった。翌16日には僕がモーサテにスタジオコメンテーターとして出演し、今後の株式市場の展望を述べた。その1週間後の5月23日に日経平均は1000円を超える大暴落を演じたのだった。今回も11月15日に日経平均は1万5000円台を回復した。そして土日を挟んで翌営業日となる18日にまたも僕がモーサテに出て、この先の株式相場の見通しを話したのである。
モーサテの出演スケジュールはだいぶ前から決まっている。その前日に日経平均が1万5000円台を回復するなんて、もちろん分かるわけがないのだが、たまたま2回連続でそういう巡り合せになったのだ。

広木 「う〜ん、やっぱり、俺って何か『持ってる』気がするなあ」
益嶋(後輩)「これでまた暴落が起きたら、悪運を『持っている』という烙印を押されますね!」
広木 「縁起でもないこと言うな!」

18日のモーニングサテライトでも、この話をした。今日の株の見通しを語るコーナーである。持ち時間はおよそ1分半しかない。しかも、OA(オンエア)は押して(時間が予定よりも足りなくなること)いた。そこで、こんな話をしたものだから、佐々木明子キャスターから
「この尺(割り当て時間)が足りない時に、そんな話をしなくても!」
と怒られてしまったが、いつ、どんな状況でも笑いをとりにいくのが僕の使命だと思っているので仕方ない。まずは、このエピソードで笑いをとったあとは、やや巻き気味に(急いで)、まじめな話をした。

確かにNT倍率は「5.23ショック」近辺と同水準まで上昇している。短期筋による先物主導の動きで指数だけが買い上げられていると見えなくもない。そうであるなら、危険な状態だ。彼らは逃げ足が速いだけに、ちょっとしたきっかけで、5月の時みたいに暴落が起こる危険性はある。しかし、NT倍率の上昇が、常に暴落の前触れであるとは限らない。実際に、今回のアベノミクス相場の初期段階や春先の一本調子の上昇過程でも、NT倍率が現在並みに上昇した場面はあった(グラフ1)。日本株の先高観が台頭すると、まず先物主導の上げになる。その後、実需がついてきて物色対象が広がる。幅広い銘柄に買いが入り、東証全体の動きを表すTOPIXが上昇しNT倍率が低下する。そうした相場のパターンであれば問題はない。5月に急落する前はそのような良い循環物色が続いていたのである。



足元の1万5000円は「企業業績に裏付けられた1万5000円」である、という点も大きな違いである。日経新聞に載っているPERをもとに、日経平均のEPS(1株当たり利益)を求めると960円を超える水準にまで上がってきている。今年度上期はずっと900円程度であった。PER15倍で評価すると、

900円 × 15倍 = 13500円

これがずっと、日経平均の月末値が1万3000円台から放れられない理由であった。5月の高値は、月足で見れば所詮、「ひげの範囲」でしかなかった(グラフ2)。言うなれば、5月の1万5000円超の水準というのは「幻の1万5000円」であったのだ。



今は違う。昨日付けでクィック・コンセンサスの日経平均のEPSを求めると998円まで上方修正されていた。ほぼ1000円である。これは前から僕が主張してきたことだ。4-9月期決算発表が出そろえば、日経平均のEPSは1000円になると。

PER15倍で評価すると、

1000円 × 15倍 = 15000円
まったくのフェアバリューである。

重要な点は、ニューヨーク・ダウ平均と完全に並んだということである。

ダウ平均のEPSも1000ドル程度だ。ブルームバーグの予想EPSは1058ドルである。

昨日の終値が15967ドル。

15967ドル ÷ 1058ドル = PER 15倍

日経平均の今日の終値は15076円。

15076円 ÷ 1000円 = PER 15倍

まったくのスクラッチ、横一線である。ならば、問題は、ここからどちらのほうが、アップサイドへのリビジョン・モメンタムが強いかということである。どう考えても日本株のほうが上方修正へのコンビクション(確信度)が高い。僕はそう思うし、おそらく、大方の外国人投資家もそう考えるだろう。



長期的に見たら、日本株のこんな水準、全然高くない(グラフ3)。まったく怖い水準ではないのである。

今日は『ニルスのふしぎな旅』の作者であるセルマ・ラーゲルレーヴの生誕155周年。これに合わせて今日のグーグル検索ページのロゴ・デザインは、がちょうのモルテンに乗ったニルスの可愛らしいイラストに変更されている。



日本株は暴落前夜にあるのではない。ニルスのように、空高く羽ばたく前夜にある。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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