「私たちの記事を盗んで(Steal Our Stories)」――。ピューリッツアー賞を二度受賞した非営利ネットメディア・プロパブリカのサイトに掲載されている奇妙な呼びかけ。紙媒体を持たず、少数精鋭で調査報道を行うプロパブリカは積極的に他社と連携する。データジャーナリズムでも同様だ。プロパブリカがデータを検証、整理し、全米の教育機会を可視化した「教育機会の格差(The Opportunity Gap)」は、地方メディア10社がデータを活用して報道し、全米各地で家庭の経済環境や人種の違いによって子どもたちが直面している教育格差を浮き彫りにした。(取材・文・撮影/日本ジャーナリスト教育センター)

無料でデータベースを提供

 プロパブリカのサイトに「Tools & Data」というコーナーがある。プロパブリカが調査して整理したデータベースやグラフィックを集約し、提供する。クレジットを入れるといった条件などを満たせばすべて無料で利用できる。教育機会の格差(The Opportunity Gap)も、その中にある。

◆図1 全米の教育機会の格差を明らかにしたThe Opportunity Gap

データジャーナリズム英米最新レポート(2)<br />5年でピューリッツアー賞二度の米プロパブリカ <br />データ連携で「教育機会の格差」を浮き彫りに住所を入力することで、特定地域にある学校の教育レベルを比較できる。フォースクエア、フェイスブックと連携されており、検索のハードルをさげている


 教育機会の格差は、アメリカ教育省公民権局(U.S. Department of Education Office of Civil Rights)のデータなどを元に、大学レベルの指導を行うアドバンスト・プレースメント(AP)プログラムの実施状況や生徒、教員の数などを、州や学校ごとに可視化した。学校は、3000人以上生徒がいる地区の全ての公立学校が対象。生徒の家庭の所得と、APプログラムの達成度をはかるAPテストの得点の間に、相関関係があることなどを明らかにした。