十数年にわたる鎖国状態で、すっかり“ワクチン後進国”となってしまった日本。この状況を変えるべく、昨年末から厚生労働省で予防接種法改正の議論が始まった。患者会や国内外の医薬品メーカーの期待はふくらむ一方だ。しかし、予防接種体制の抜本改革は、一筋縄ではいかない。

「以前なら考えられなかった。日本でもワクチンをめぐる状況は変わりつつある」──。

 米ファイザー社傘下、ワイス社のジェームス・フェリシアーノ・ワクチン事業本部長は、日本のワクチン市場に変化の兆しを感じている。“兆し”というのは、昨年10月、二つの海外ワクチンが承認されたことだ。その一つが、同社の小児用肺炎球菌ワクチンで、2月24日に発売されたばかりである。

 また日本は昨年、新型インフルエンザ対策でも、海外ワクチンの輸入に踏み切った。国産ワクチンの不足を解消するためとはいえ、厚生労働省は初めて臨床試験を簡略化する「特例承認」も認めた。

 確かに、過去と比べれば大きな変化で、閉鎖していた市場に風穴が開いた印象は強い。

 日本では、1995年に承認されたA型肝炎ワクチン以降、2007年まで新製品が生まれなかった。むろん海外ワクチンが承認申請されることもなかった。

 ところがこの間、海外ではワクチンの新製品が続々と開発された。

 その結果、世界で広く使われているワクチンが、日本では接種できない、または費用の高さなどから接種しづらい状況、すなわち“ワクチン・ギャップ”が生まれた。

 前述したワイス社の肺炎球菌ワクチンもその一例だ。米国で初めて承認されたのはじつに10年前にさかのぼる。日本の発売は世界で98番目という遅さであった。