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苦境の米国経済にダメ押しか?
「デフレスパイラル襲来」の恐怖

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第56回】 2008年12月2日
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 つい最近まで、「インフレになる!」と心配していたのだが、ここへ来て、状況が大きく変化している。

 夏場以降、米国をはじめ世界の主要国の景気後退は一段と鮮明化しており、需要の増加によるインフレ圧力は低下している。

 また、インフレ懸念の最大の原因の1つであった、原油や一部穀物価格は大きく反落しており、原材料価格の低下によって、企業の生産コストを押し上げる要因はかなり落ち着いている。

 すでに米国では、今年10月の消費者物価指数が統計開始以来最大の下げ幅を記録するなど、デフレの足音が忍び寄っていることがわかる。経済専門家の一部からは「デフレ圧力が強まっている」との指摘が出ている。

 実は、現在のような経済状況の下では、「インフレよりもデフレの方が厄介」だ。世界経済が不動産バブルの後始末を行なっている最中に、デフレが本格化することは、お金を借りている人の返済負担を増加させる可能性があるからだ。

 これまでは米国を中心に、お金を借りて、その資金を不動産や原油などに投資し、多額の利益を上げる投資手法が、主流になっていた。それが崩れるきっかけになったのが、サブプライム問題だった。それに追い討ちをかけるように、今度はデフレの脅威が迫っているのだ。

過去最大に落ち込む米国消費
デフレスパイラル懸念が噴出

 私たちは、経済低迷とデフレが重なったときの“怖さ”を十分に知っている。1990年代、バブルの後始末で景気の低迷が長期化したことに加え、“価格破壊”と呼ばれる「物価下落=デフレ」が重なった時期、私たちの生活にも悪影響が及んだことは記憶に新しい。

 そういう状況が、今、世界的に起きる可能性が高まっているのだ。バブルの後始末とデフレの両方を一度に相手をすることは、口で言うほど容易なことではない。

 11月中旬に米国労働省が発表した、今年10月の消費者物価指数は、前月対比マイナス1.0%と、1947年の統計開始以来最大の落ち込みとなった。この背景には、投機筋のオペレーションによって、原油や一部穀物などの価格が急落したことがある。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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