この時期によく見かけるセイタカアワダチソウ

 暑い夏が終わっていきなり秋になった。千葉と茨城の県境近くの田園地帯にある家の近くの田んぼでは、畦道に沿ってヒガンバナが大輪の花を咲かせている。よく見れば不思議な花だ。葉がない。茎と花だけ。ならば光合成ができないじゃないかと思うけれど、花を落とした後に葉が出るらしい。

 ヒガンバナだけではない。少し前までは路地を歩けば、キンモクセイの香りがいたるところに漂っていた。地面にはびっしりとドングリが落ちている。セミやカエルの声はいつのまにか聞こえなくなった。代わりに夜はエンマコオロギやオカメコオロギの大合唱だ。
 あまりに暑い夏が長く続き、そして秋の訪れが唐突だったためか、身体のほうは急激な季節の変化に戸惑っているけれど、自然はしっかりと追いついているという印象だ(でもサンマはいまだに高い)。

 この時期にもっとも多く見かける花は、何といってもセイタカアワダチソウだ。漢字で書けば背高泡立草。何となく情緒がない。無機的だ。愛情がほとんど感じられない。
 セイタカアワダチソウは外来植物だ。北アメリカ原産で、明治末期に園芸目的で日本に持ち込まれていたらしいが、戦後に急激に増えた。GHQとして駐留したアメリカ軍が持ち込んだ物資に、種子が付着していたらしい。

 人里離れた山中などではほとんど繁殖しない。どちらかといえば都会の道路端や空き地、線路沿いや河川敷などに大群落をつくる。そのエリアはほぼ日本全土。あまりに繁殖力が旺盛であることに加え、花粉症の要因とされた時期もあり(でも風媒花ではなく虫媒花なのだから、これについてはほぼ間違いなく冤罪だ)、要注意外来生物に指定されており、さらに日本の侵略的外来種ワースト100にもランクインしている。
 つまり悪役だ。

 繁殖力が旺盛な理由のひとつは、他の植物が嫌がる物質を根から放出(専門用語でアレロパシーという)するからだ。さらに種子だけではなく地下茎でも増える。多年草だから、地上部分だけを刈り取ってもまた生えてくる。しかもその和名が示すように、草としては例外的なほどに背が高い。4.5メートルという記録がある。普通の家の屋根より高い。気がついたら家を覆われていたということになりかねない。今も厄介な雑草の代名詞だ。