ヘルスケア分野でイノベーティブな医療サービスを提供するGEヘルスケア・ジャパン。川上潤社長は、質の高い新たな医療提供システムの構築を先導するイノベーション創出に日々取り組んでいる。片や、医療、エネルギー・環境、交通・輸送、機械・設備、教育などあらゆる分野で、日本の環境に合わせたITによるビジネスイノベーションをけん引する日本オラクル。両社のトップが、医療観や日本が目指すべき医療モデルを語り合った。

超高齢社会を迎えた日本が
直面する3つの課題

遠藤隆雄 日本は今、世界のどの国も経験したことのない超高齢社会を迎えています。人々の健康寿命を延ばし医療費を抑制することが喫緊の課題ですが、次々と打ち出される施策は現実の社会の変化に追い付いていません。

日本オラクル
取締役会長執行役
遠藤隆雄
1977年日本アイ・ビー・エム入社、取締役インダストリアル・サービス事業部長、常務執行役員を経て、2008年日本オラクル社長執行役員最高経営責任者に就任、取締役代表執行役社長最高経営責任者を経て、13年8月より現職。

 医療の質向上と効率化を目指し医療情報の電子化が日進月歩で進んでいるものの、いまだ情報はバラバラに分断され、統合する仕組みづくりが遅れています。これは、医療を受ける側のみならず、医療を提供する側、また研究開発に携わる人々、さらには医療の制度や政策を立案する人々にとって、大きなマイナス要因です。

川上潤 超高齢社会に対応する医療や介護の環境をどのように整備するかについて、今世界は、日本からのイノベーションの発信に注目しています。遠藤会長も実感されていると思いますが、グローバル企業の日本法人にいると、そうした世界からの期待を痛感します。

遠藤 医療の課題は、根本的には情報の課題といえます。その意味で、ITが医療に及ぼす影響は計り知れません。オラクルは数年前から、世界中でITを駆使した医療情報の連携に取り組み、安全で安心な医療提供や研究開発の基盤づくりに貢献しています。そうした経験を生かして、日本でもこの分野での活動を強化してきました。
 これまでのような画一的な医療観や医療モデルは転換する時期に来ています。国や行政や医療者に任せ切りにするのでなく、産業界も業界の壁を越え、互いのビジネスチャンスを軸に連携していかなければなりません。われわれはビッグデータを価値あるインテリジェンスに変換し、利用者にとっての有意義な変革に貢献することを目指していますが、常にイノベーティブな医療サービスを提供されてきたGEヘルスケア・ジャパンはどのような構想をお持ちでしょうか。

川上 医療や介護は今後の日本経済発展の源泉であり、私たちはこの成長分野で確実に貢献できると考えています。そこで着目するのが3つの変化です。

GEヘルスケア・ジャパン
代表表取締役社長兼CEO 川上潤
1987年に東京大学経済学部卒業後、日本ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン入社。94年ノースウェスタン大学でMBAを取得。97年日本ゼネラル・エレクトリックの企画開発部長に就任し、同社取締役、GEメディカルシステム・インターナショナルを経て、2004年GE横河メディカルシステム(現GEヘルスケア・ジャパン)常務取締役に就任。11年6月より現職。

 第1に、高齢化による疾病構造の変化です。今後増えていくのは、即座に命に関わらないけれど治りにくく治療が長期にわたる慢性疾患です。求められるのは、治療より継続的な管理のシステムであり、重症化をいかに予防するかという発想です。
 第2に、病院から在宅へという、医療が患者さんの生活に寄り添う医療体制の変化です。在宅での療養をいかに質の高いものにしていくか、このインフラ整備には大きなビジネスチャンスがあります。
 そして第3に、コストを増大させることなく、こうした変化への対応を推進する生産性向上へのチャレンジです。それには、ハードウエア、ソフトウエア、さらにはウエットウエア(バイオ、ライフサイエンス分野)の革新が必要です。
 GEヘルスケアの事業は、体の中を切らずに見るイメージング医療機器からスタートしました。CTやMRIは今では普通に使われていますが、半世紀前は革新的な診断技術でした。これらを土台に現在は、分子レベル、物性レベルでの解析技術の開発へと、ライフサイエンスのさらに深い部分に踏み込んだイノベーションを追求しています。高齢化による3つの大きな変化に対しても、それぞれの領域で使いやすく価値の高いソリューションを提供しています。