(2)ストレスなく続けられる

 自由な発想をするために情報を保存しているつもりが、いつの間にか大きなストレスになっている。分類・整理を前提とした知的生産術を実践している人の中には、このように、続けるために歯を食いしばって我慢しているケースが少なくありません。

 いつの間にか、手段が目的になってしまうのです。ここで紹介するシステムは、このような本末転倒な事態とは無縁です。義務的なメモや資料集めにならず、たまっていく情報を負担に感じることもありません。結果として、ストレスを感じずに継続することができます。

 僕は、大学時代から新聞記者を経て、現在にいたるまでの約10年間、あらゆる知的生産の仕事をこの方式でやってきました。面倒くさがり屋でも続けられるということは身をもってわかっています。

 続けられる理由は、分類・整理の手間がないことだけではありません。特別な気構えが必要ないことも重要だと思っています。いわゆる「アイデアノート」や「企画ノート」などを持ち歩くことは、ある種の緊張状態をつくり出します。

「とっておきの企画のネタをメモしておこう」
「自分だけの貴重なアイデアを書き留めていきたい」
「ユニークな体験や良書からの学びを書いておくぞ」

 このように、知的生産のための「とっておきの情報」をノートに書いて集めようとすると疲れます。1ヵ月や2ヵ月くらいなら続けられるかもしれませんが、1年2年となると、無理がたたってくるのではないでしょうか。また、このような気負いがあると、「何も特別なことがないから、ノートに書くこともない」となって3日坊主になる可能性も高い。

 僕は、これとは反対に「何でも書く」「何でも貼る」ことを提案します。たとえば、通勤途中に、昨夜見た映画の感想をメモしたり、会議中にふと思ったことを少し書き留めておいたり、雑誌で見つけたかっこいい服の写真を貼っておいたりと、重要度で区別することなく、どんなことも気軽にノートに収録していきます。

50万人が支持したノート術<br />「ノート1冊方式」が一番使える3つの理由

 アイデアや企画など「特別なことを書かなければならない」という縛りがないので気楽そのもの。頭も使いません。仕事の役に立つか、ネタになるか、おもしろいか、ユニークかといったことは考えず、ただ生活の中で触れるピンときたものをどんどんノートに投げ込んでいく。これなら「何も書くことがない」という事態は起こりません。

 しかし、たとえ無目的に集めた情報でも、本書のやり方なら知的生産の素材として生きてきます。詳しくは本編でも解説しますが、一つひとつは「すごい情報」ではなくても、一ヵ所にまとまると「使える情報」になってくるのです。長くノートを使っているうちに、このような仕組みが肌で理解できる。このことが「動機づけ」となってさらに続けられるようになります。