「ごちゃまぜ」だからヒントになる

 日常生活やプライベートで集めた情報が仕事のヒントになる。こう言い切ってしまうと、疑問に思う人もいるかもしれません。もちろん「ピンときた」「おもしろい」と思った雑誌の記事が、すべて企画になるわけではありません。「何かに使えるのでは」と思ったものの、そのまま遠い過去の情報になってしまうことも多いでしょう。

 では、「使えそうな情報」だけを集めておけばいいのでしょうか? たとえば、日本経済新聞から自分が働いている業界の記事だけを切り抜いていくといったように。

 ところが、これは意外と役に立たないのです。まず、似たような情報ばかり集まってしまうという問題があります。仮に乳製品メーカーの社員が、乳製品の記事を読んでいても、同業者の傾向について詳しくなるだけです。新しい発想につながるような刺激には、なかなかなりません。

 そうではなくて、もしスポーツ雑誌を読んでいたら、「筋トレ向けのプロテイン入り牛乳って売れるかな?」などと、さまざまに思いを巡らせることができるでしょう。業務知識を深めるなら、業界の記事を集める方がいいかもしれません。しかし、知的生産の上では、このように一見関係のない情報にどんどん触れる方がいいのです。

 また、「使えそうか」という視点で選んでいると、特におもしろくもない情報、何も琴線に触れない情報をノートに入れることになってしまいます。「おもしろくないが使えそう」という情報も多いからです。

 こうなると読み返すのが苦痛だし、思い出して頭の中であれこれと考えることもしなくなるので、結局どれだけ集めても使えません。では、どんな情報が知的生産に使えるのでしょうか? 10年以上ノートを使ってきた経験から言えることは、

「使えそうなものほど使えず、使えなさそうなものほど使える」

 ということです。特に「仕事には何の関係もないが、おもしろい」という切り抜きや考えごとのメモほどアイデアの芽になることが多い。過去のノートを見てみると、まったく仕事に関係のない情報がたくさんあります。

必要なのはノート1冊だけ。<br />誰でもできる知的生産システムの作り方

 しかし、じっくり見てみると、直接的には活かされていなくても、仕事で突き詰めていくテーマや問題意識を孕んでいたり、考える手がかりになるようなものがたくさんありました。

 だから、「使えるか、使えないか」は、ほとんど考えなくて大丈夫です。自分の感性を信じて、「おもしろい」「かっこいい」「きれい」「かわいい」「ほしい」「やってみたい」「便利だ」「行きたい」というものを、どんどん書き、貼るようにしましょう。大事なのは、幅広い情報の中から「ピンときたもの」を集めることです。すべてはそこから始まります。(第3回へ続く)


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著者紹介
必要なのはノート1冊だけ。<br />誰でもできる知的生産システムの作り方
奥野宣之(おくの・のぶゆき)
1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部でジャーナリズムを学んだあと、出版社、新聞社の記者を経て『情報は1冊のノートにまとめなさい』で著作デビュー。独自の情報整理術や知的生産術がビジネスパーソンを中心に支持を集め、第2弾『読書は1冊のノートにまとめなさい』、第3弾『人生は1冊のノートにまとめなさい』と合わせたシリーズは累計50万部を超えるベストセラーとなった。
ジャーナリストの経験を活かし、ウェブや雑誌のライターとして活動するかたわら“ノート本作家”として、メディア出演・講演などでも活躍中。仕事に活かせるノートや文具の活用法、本とより深く付き合うための読書法、人生を充実させるライフログの技術、旅行や行楽を楽しむための旅ノート・散歩ノートの技術など、活動の幅は広い。趣味は古墳めぐりと自然観察。ついでに写真撮影。仕事だけでなく家庭や趣味でもノートを使いこなすライフスタイルは、NHKやTBSでも放送され反響を集めた。
その他の著書は『旅ノート・散歩ノートのつくりかた』『知的生産ワークアウト』『「処方せん」的読書術』『新書3冊でできる「自分の考え」のつくり方』など多数。

著者エージェント:アップルシード・エージェンシー
http://www.appleseed.co.jp