ときにはめいっぱい叱り、ときにはめいっぱい褒めちぎり……。こうした巧みな方法で、部下のやる気を高める上司がいます。しかし最近、そんなアメとムチを使い分けるタイプの上司に対して、「無視」を決め込む、あるいは「(上司の行動は)間違った接し方である」と対抗してくる部下が増えてきたようです。

 アメとムチは、10年前であればスタンダードなマネジメントスタイルでした。それを否定されたら、「どうしていのかわからない…」と戸惑う管理職がたくさん出てくるのは間違いありません。では、なぜそうしたマネジメントスタイルが通用しなくなってきたのでしょうか。今回は、そんな上司とイマドキ部下の価値観の違いについてお話ししていきましょう。

「アメとムチ」が大好きな体育会系上司

 この嘆きを誰かに聞いてほしい。フェイスブックやツイッターで、いまの気持ちを発信したい……。しかし、そんな思いをグッと堪えて、

「俺のマネジメントスタイルは古びてしまったのか。でも、いつから古びていたのだろうか?」

 と、1人つぶやいている人がいます。事務機器販売会社で管理職をしているGさん(45歳)です。ある部下との会話から、何やらやり切れない気持ちに駆られている様子。普段とは対照的な雰囲気を周囲も察して、心配しています。

「Gさんらしくない憂鬱な感じが醸し出されているけど、何があったんだろう」

 ちなみにGさんは、学生時代に体育会アメフト部で活躍。社会人になっても「元気な声で周囲を明るく」をモットーに気合の入った仕事ぶりで、社内でも有名な存在です。それゆえ、ときには厳しく、ときにはやさしく「アメとムチ」をうまく使い分けるマネジメントで巧みに部下を指導してきました。

 Gさんの「アメとムチ」とは、このようなことを指します。

ムチ:やる気がない素振りが見えると徹底的に厳しく注意する
・営業会議でやる気を感じない発言をした部下は「出て行け」と追い出す
・朝礼で「○○くんは成長意欲が低いからミスが増えたのだ」と名指しで注意

アメ:やる気が感じられる態度や言動が目立つとトコトン称える
・「最近はよく頑張っている」と個別に声をかけて褒めまくる
・ポケットマネーで居酒屋に連れて行っておいしい酒を振る舞う

 こうしたマネジメントスタイルに「ハマる=感銘」を受ける部下もたくさんいます。つい最近までGさんの組織は、「G軍団」と呼ばれ、鉄の結束を誇ることで職場内でも話題になったこともあったほどでした。