第3戦、“野生”を感じなかった巨人の拙攻

 象徴的だったのが第3戦。楽天の先発は美馬(みま)学だったが、5回までに「3球続けて変化球」というケースがじつに8度あった。
 当然、3球目は変化球をマークすべきである。しかし、このうち3球目の変化球をヒットにしたのは2回だけだった。

 巨人のバッターは、いつでもストレートを待ち、ボールになる変化球や落ちる球を振らされていた。
 結果、美馬に6回途中まで零封され、みすみす試合を落としたのである。

 打てないのではあれば、せめてセーフティバントを試みたり、機動力をからめたりしそうなものだ。
 ましてや田中のような連打はなかなか望めないピッチャーが相手であるときは、なおさらそういう姿勢が必要なのだが、巨人打線は淡々と野球をやっていた。

 第2戦、同点で迎えた6回。巨人は田中からツーアウトながら1、3塁のチャンスをつかんだ。
 3塁ランナーは阿部慎之助。足は遅い。しかし、そこがじつは狙い目なのである。
 私なら、阿部の鈍足を逆手に取って、ダブルスチールのサインを出す。
 阿部が鈍足であるゆえ、相手キャッチャーは1塁ランナーがスタートを切ったとき、「阿部は本塁には突入してこない」と判断し、セカンドに送球する。
 その瞬間、すなわちキャッチャーの指からボールが離れると同時に阿部にスタートを切らせるのである。これなら鈍足であっても、セーフになる確率は高くなる。

 いわばギャンブルであるが、正攻法だけで対しても難攻不落の田中からはそうそう点を奪うことはできない。リスク覚悟の奇策が必要なのだ。

 それに、仮に失敗したとしても、「巨人は何を仕掛けてくるかわからない」と、楽天バッテリーに余計な神経を使わせることができる。それが、その後効いてくるのである。

 しかし、巨人ベンチは動かなかった。
 後続バッターに、ただきた球を打ちにいかせただけだったのである。